こんにちは、manotchです。今回は、Xduoo社の重量級真空管ヘッドホンアンプ「TA-66」を購入しましたので、詳細レビューをお届けします。重さなんと5kg!この金属の塊から一体、どんな音が飛び出すのでしょうか?ワクワク。

以前レビューした同社の「MT-602」も良きアンプでした。

グレーの筐体に赤いボリュームノブが映え、デザインに統一感がありますね。
これまでにも何台か真空管ヘッドホンアンプをレビューしていますので、ご興味のある方はこちらのまとめ記事もご覧ください。趣味性全開です!
目次
■TA-66を購入した経緯
選んだ理由は、ずばり「真空管サウンドにどっぷり浸りたい!」からです。最近、個人的に『真空管の養分』が不足気味でしたので、補充することにしました(笑)。
そして、もう一つの理由は『見た目』。とにかく大きくて格好いい!写真の手前がTA-66ですが、後ろに少し写っているDACアンプ「FiiO K9 AKM」と比較しても、その大きさは歴然です。

デスクに設置すると、まさに「鎮座」という言葉がぴったり。電源を入れると真空管がほんのり赤く灯り、「趣味のオーディオ」という雰囲気を醸し出します。
■開封から音出しまでの手順
それでは少し時間を巻き戻して、開封の儀から見ていきましょう。大きな段ボールに分厚いクッション材で厳重に梱包されており、輸送時の破損対策は出来ているようです。これなら安心して注文できますね。真空管もクッションの中にしっかり保護されていました。

付属品は、電源コード、簡易マニュアル、保証書、6.35mmから3.5mmへの変換プラグです。

TA-66本体は、やはり迫力があります。しかし、奥行きが30cm近くあるため、設置にはある程度のスペースが必要です。それから、購入時には真空管が取り付けられていないので、自分でソケットに挿入します。
真空管のピンには向きが決まっているので、間違った方向に挿入することはできません。ソケットの溝と真空管の突起を合わせ、垂直にまっすぐ、奥までしっかりと押し込むのがコツです。

リアパネルにはRCAの入力(AUX IN)と出力(AUX OUT)が1系統ずつあります。今回はDACアンプ「FiiO K9 AKM」のLINE OUTをAUX INに接続しました。AUX OUTを使えば、このTA-66を真空管プリアンプとして活用することも可能です。
中央の赤いスライドスイッチは電源電圧の切り替え用で、AC 110V (100-120V) と 220V (220-240V) に対応しています。日本の家庭用コンセントは100Vなので、「110V」側に設定します(初期設定で110Vになっていました)。
電源スイッチもリアパネルにあります。電源コードが3Pタイプなので、環境によっては3Pから2Pへの変換アダプタが必要になる場合があります。
■ファーストインプレッション
早速、音出しです。比較対象として、隣に置いたFiiO K9 AKMの内蔵ヘッドホンアンプと聴き比べてみました。

まず音を出して感じた第一印象は、「うわっ、なんて懐の深い、ゆったりとした音なんだ!」でした。音場が広く、特にボーカルは生々しく艶やかに響きます。一方で、中高音域はレスポンスが良く、軽やかに鳴る印象です。
面白いのは、小音量に絞っても一つ一つの音が埋もれず、クリアに聴き取れる点です。このあたりに、後述する内部構造のこだわりが効いているのかもしれません。
米津玄師の『PLAZMA』を聴いてみます。ビートの効いた低音と、随所に入るシャープな効果音が特徴的な楽曲ですが、TA-66を通すとそれらの鋭い音も角が取れ、艶っぽくソフトに響きます。これを「味付け」と捉えるかで、好みが分かれそうです。
続いて、久石譲の『海の見える街』。言わずと知れた『魔女の宅急便』の名曲ですが、弦楽器の一つ一つの音が艶を帯び、表現力が非常に豊か。ゆったりとしたクラシック系の楽曲は、このアンプの得意分野のようです。
こうした音を「甘い」あるいは「ウォーム」と表現するのでしょうか。現代のモニターライクで制動の効いたサウンドとは対極ですが、小編成のクラシックやジャズなどを、雰囲気良くじっくり聴かせてくれます。これはハマりますね。

付属の真空管は、大型管が6N5PN、小型管が6N2です。それぞれ1本に左右2チャンネル分の回路が内蔵されています。大型管の方は少し年季が入っているようでしたが、布で磨くと綺麗になりました。
■スペックから見るTA-66の性格
ここで、TA-66のカタログスペックを見てみましょう。以前MT-602を実測した際、ほぼカタログ通りの性能だったので、Xduooの公表値は信頼性が高いと考えています。
主な仕様(XDUOO公式サイトより引用)
項目 | スペック |
電源 | AC 110V / 220V |
出力 | 200mW (300Ω負荷時) |
再生周波数帯域 | 10Hz 〜 30kHz (±1dB) |
ゲイン | +18dB |
全高調波歪率 | 0.08% (1kHz, 300Ω負荷時) |
S/N比 | 107dB |
対応ヘッドホンインピーダンス | 60Ω 〜 600Ω |
入力端子 | RCA x 1系統 |
出力端子 | 6.35mmヘッドホンジャック、RCA(プリアウト) |
サイズ (W x D x H) | 29.0 x 15.3 x 18.4 cm |
重量 | 5.0kg |
ここで特に注目したいのが、「対応ヘッドホンインピーダンス:60~600Ω」という部分です。低インピーダンスのイヤホンやヘッドホンも駆動できる現代的なアンプとは異なり、TA-66は高インピーダンスのヘッドホンを朗々と鳴らすことを得意としているようです。
■ヘッドホンとの相性をチェック
そこで、手持ちのインピーダンスが異なるヘッドホンを色々と繋いで、その相性を確かめてみました。

▼試聴したヘッドホン(インピーダンス順)
- BEYERDYNAMIC DT990PRO(250Ω)
- SENNHEISER HD660S(150Ω)
- SENNHEISER HD555(50Ω)
- BEYERDYNAMIC DT1990PRO(32Ω)
インピーダンスが低いヘッドホンが鳴らないわけではありません。しかし、例えばDT1990PRO(32Ω)のような低インピーダンスのモデルだと、音がゆったりしすぎてしまい、ヘッドホン本来のシャープさやスピード感が発揮しきれない印象を受けました。
ところが、HD660S(150Ω)やDT990PRO(250Ω)のような高インピーダンスのヘッドホンを繋ぐと、音の輪郭が「シャキッ」とし、パンチのあるサウンドが飛び出してきます。それでいて音の柔らかさは失われず、余裕を持ってヘッドホンをドライブしているのが伝わってきます。SENNHEISER HD650(300Ω)も間違いなく相性が良さそうですね。
むぅ~これは他のジャンルも聴かないと!時間が溶けるー。
Xduoo TA-66は、微細な音も埋もれさせずに描き出し、音場も広い。非常によく出来たアンプだと感じます。この「音が聞き取りやすい」感覚がどこから来るのか、後ほど内部を分解して考察してみたいと思います。

■気になる点と対策(ハムノイズ)
しばらく聴いていると、少し気になる点が出てきました。ボリュームノブを操作しようと初段の真空管に手を近づけると、「ブーン」というハムノイズが発生します。
手を離せばノイズは消えるのですが、最初はアレ?なんかおかしいなと戸惑いました。
これも真空管アンプの個性と、おおらかな気持ちで付き合うのも一興ですが、フォロワーさんから真空管にかぶせる「シールドケース」というものがあると教えていただきました。ノイズは初段管(小型管の方)で拾っているようなので、早速取り寄せて試してみることに。

届いたのがこちらのシールドケース。これを初段管に取り付けてみます。

結果は…効果てきめん!
シャーシの下までしっかり押し込むと、手を近づけてもハムノイズはぴたっと聞こえなくなりました。これは素晴らしい。ただ、見た目の好みが分かれるところではありますね…うーん。
ちなみに、このシールドケースはバネの圧力で真空管を固定するため、振動を抑制する効果もあるようです。装着後は、音のフワッとした感じが少し抑えられ、よりクリアなサウンドになりました。音質の微調整としても面白いアイテムです。
■こだわりの内部構造を徹底解剖
さて、内部構造に興味のある皆さま、お待たせしました。いよいよTA-66の分解写真をご紹介します。音質の秘密は、この中にヒントがありそうです。

おお…これは凄い。この配線を見るだけでも買った価値がありました。
まず目に飛び込んでくるのは、基板を使わずに手作業で要所へ配線を行う「ポイント・トゥ・ポイント配線(空中配線)」です。メッキが施された銅線が、部品から部品へと最短距離で立体的に結ばれています。これは量産機では非常に手間のかかる手法で、まさに「ガチ」で音質を追求した設計思想が伝わってきます。
電源のコンデンサから各ブロックの要所へ直接配線し、アースも1点に集約する「スター配線」「一点アース」が採用されているようです。これにより、音が明確に分離し、微細な音もクリアに聴こえる効果が期待できます。TA-66の音の綺麗さは、この丁寧な配線によるところが大きいのかもしれません。

次にボリューム周りを見てみましょう。一般的な可変抵抗ではなく、カチカチとクリック感のあるステップ式の「アッテネーター」が採用されています。これは高級機に使われる仕様ですね。

多数の特性の揃った固定抵抗を切り替えることで音量を調整するため、小音量時に左右の音量バランスが崩れる「ギャングエラー」が原理的に発生しません。実際に使っていても、ギャングエラーは全く感じませんでした。音質面でも有利な方式だと思います。
製作者の情熱が伝わってくるような力作だと思います。好きな人が、好きなように、こだわり抜いて作ったらこうなった、という感じがしますね。やるな、Xduoo。
音質に大きく影響するカップリングコンデンサには、XDUOOのロゴが入ったカスタム品らしきものが使われていました。ここにもメーカーのこだわりを感じます。

■回路構成と音質の考察
比較的安価で小型の真空管ヘッドホンアンプは、初段(プリアンプ部)に真空管を、後段(バッファーアンプ部)に半導体オペアンプを使用した「ハイブリッド構成」が多く見られます。これは、真空管の持つ温かみとオペアンプの持つ高い駆動力を両立させる「良いとこ取り」の設計ですが、音質的にはどうしても「真空管風味の半導体アンプ」という印象になりがちです。

一方、TA-66は初段も後段も真空管で構成された「オール真空管アンプ」です。これにより、真空管本来のサウンドキャラクターがより色濃く現れているのだと思います。購入価格は約37,000円でしたが、この手間のかかった内部構造を考えると、驚異的なコストパフォーマンスです。国内メーカーが作ったらいくらになるんでしょう。貴重な存在だと思います。
さぁ、オーディオ的な養分で言うと『真空管』の養分をしっかり補充できました。これで当面は大丈夫そうです!(笑)
■周波数特性・出力インピーダンス実測データ
念のため、TA-66の周波数特性と出力インピーダンスを実測しましたので、データを公開します。測定にはオシロスコープと、自作の負荷抵抗治具を使用します。


左の周波数特性グラフを見ると、300Ω負荷時には30Hzから50kHzまでほぼフラット(±0.5dB)で、カタログスペック通りの優秀な特性です。しかし、負荷が100Ωと低くなると、低域が少し減衰し、全体のゲインも若干低下します。このデータからも、TA-66が100Ω以上の高インピーダンスヘッドホンを鳴らすために設計されていることが分かります。
右のグラフは出力インピーダンスです。周波数全域で、概ね136Ω程度でした。
このアンプは、ヘッドホンは選びますが、インピーダンスが合った時の生き生きとした魅力的なサウンドは格別です。これは高インピーダンスのヘッドホンが欲しくなりますね…(沼の予感)。
■ダンピングファクターから考える音の魅力
アンプとヘッドホンの相性を示す指標の一つに「ダンピングファクター(DF)」があります。これはアンプがヘッドホンの振動板をどれだけ正確にコントロールできるかを示す数値で、以下の式で計算されます。
DF =ヘッドホンのインピーダンス/アンプの出力インピーダンス
例えば、インピーダンス250ΩのBEYERDYNAMIC DT990PROを接続した場合、TA-66のDFは 250Ω \136Ω =1.83となります。
一般的に、この値が大きい(10以上が望ましいとされることも)ほど低音の締まりや解像度が向上すると言われています。その観点ではTA-66のDFは低い値ですが、実際に聴こえてくる音は非常に魅力的です。このことから、必ずしもダンピングファクターの高さだけが良い音の条件ではない、ということが良く分かります。適度に「ゆるく」て、ふわっとした音にも、えもいわれぬ心地よさがあるのですね。これは勉強になりました。

ちなみに、出力を最大近くまで上げて波形を見てみると、半導体アンプのようにバッサリとクリップするのではなく、波形の頭が丸く潰れるように緩やかに歪みます。これは真空管アンプのサウンドが心地よく聴こえる理由の一つと言われています。
■総括
Xduoo TA-66のレビュー、いかがでしたでしょうか。このアンプは、「真空管ヘッドホンアンプの魅力にどっぷり浸りたい!」という方にはうってつけの一台だと思います。本格的なサウンドはもちろん、その重厚なデザインは所有する喜びも満たしてくれます。高インピーダンスのヘッドホンと組み合わせて、ゆったりと音楽に浸る。そんな豊かなオーディオライフを満喫できるモデルだと思います。買って良かったと思います!
本日はここまでにします。最後までお読みいただきありがとうございました。



ふるさと納税検討時期到来。肉、フルーツ、カニ・・(涎)

ブログランキングに参加しました。面白いと思ったらぽちっと応援してくださいね。

にほんブログ村