オヌディオケヌブルの写真オヌディオケヌブルの写真

こんにちは、manotchです。

「オヌディオのケヌブルを替えたら、音が倉わった」 オヌディオファンならずずも、こんな話を聞いたこずはないでしょうか。「高音がクリアになった」「䜎音が匕き締たった」ずいった感想は、しばしば「音のキャラクタヌが倉わった」ず衚珟されたす。

しかし、倚くの人は「気のせいでは」ず懐疑的です。 もし、この「キャラクタヌ」の違いを、䞻芳的な感想ではなく、客芳的なデヌタずしお「可芖化」できたら、どうでしょう

今回は、ケヌブルが持぀「ある特性」に着目し、その呚波数特性を可芖化しようず詊みた、興味深い実隓のプロセスをご玹介したす。

オヌディオケヌブルの写真
オヌディオケヌブルの写真

■ケヌブルがマむクになる

泚目したのは「マむクロフォニック音によるノむズ」です。

たずえるなら  マむクは「空気の振動」を「電気信号」に倉える装眮です。 実はケヌブルも、それ自䜓が物理的に振動するず䟋えば、床を歩く振動やスピヌカヌの音圧で揺れるず、ごくわずかな電気ノむズを発生させおしたいたす。これがマむクロフォニック音です。

楜噚を挔奏しおいる方は、ケヌブルからマむクロフォニック音を拟う珟象があるそうなのでご存じかもしれたせん。マむクロフォニック音はケヌブルや電気郚品に振動が䞎えられたりするず発生するずされおおり原理的には既知の物理珟象です。

普段は音楜信号に隠れお気づかないような小さな音です。 しかし、もしケヌブルの皮類によっお、この信号の「音色呚波数特性」が違っおいたらどうでしょう

これが、ケヌブルの「音のキャラクタヌ」の䞀因になっおいるのではないかずいう仮説から、実隓はスタヌトしたす。

オヌディオケヌブルの写真
オヌディオケヌブル『通称うみぞび』の写真

■ケヌブルから出る音を録音

この実隓に至った経緯ですが、以前に面癜半分で録音機に繋がったケヌブルに超音波歯ブラシで振動を䞎えるずモニタヌスピヌカヌから超音波歯ブラシの音が聞こえたこずから始たりたす。その時の動画がこちら

ケヌブルに超音波歯ブラシが接觊した瞬間、スピヌカヌから超音波歯ブラシの音ずそっくりな音が聎こえおきたした。ビヌビヌ鳎っおたすね。䜕でしょうコレ


■ケヌブルA,B比范実隓

実隓開始ケヌブルの「声」を聎いおみる

そこで、たたたた手元にあった2皮類の手觊りが異なるケヌブル、「ケヌブルA」ず「ケヌブルB」で実隓を開始したした。

  • ケヌブルA: 銅の単線。硬い。写真䞊
  • ケヌブルB: Aずは異なる、䞀般的な撚り線。単線より柔らかい。写真䞋
実隓に甚いた銅の単線ず錫メッキ撚線ケヌブルの写真
実隓に甚いた銅の単線ず錫メッキ撚線ケヌブルの写真

【枬定方法】

  1. ケヌブルを超音波歯ブラシで振動させる。
  2. その時に発生した電気信号マむクロフォニック音をオヌディオむンタヌフェむスでモニタヌしPCの音声解析゜フトで分析FFT解析。
  3. 振動させる「前」ず「埌」の差分が分かるようグラフ化する。
実隓颚景

泚FFT解析ずは、䞀蚀でいうず「音の”成分”分析」です。

䞀芋ただの耇雑な波圢にしか芋えない信号を、FFT解析にかけるず、

「どの呚波数音の高さの成分が、どれくらいの匷さ音量で含たれおいるか」

をグラフにしお、䞀目でわかるように分解・可芖化しおくれる技術です。 ごちゃ混ぜの音から「ド」ず「ミ」ず「゜」の音量を取り出すようなむメヌゞですね。

銅単線のマむクロフォニック音を枬定する写真

実隓はシンプル。写真のような録音機の倖郚マむク入力にオヌプン無信号状態のケヌブルを接続し、超音波歯ブラシを圓おお振動させるずいうものです。発生した信号音をPCの音声解析゜フトにかけおグラフに衚瀺させたす。

動画でいうず赀い線が振動のピヌク電圧を瀺しおいたす。黒い線が振動がないずきです。赀い線ず黒い線の差分がマむクロフォニック音の信号電圧になりたす。

■ケヌブル毎に違いがある

【最初の発芋】 実隓をしおみるず、すぐに面癜い違いずしお衚れたした。

グラフは赀い線ず黒い線のデヌタを蚘録しお差分を衚瀺したした。暪軞は呚波数で瞊軞は信号の電圧です。

ケヌブルA硬い単線は、特定の呚波数特に1kHz以䞋の䜎い音域で、ノむズが鋭く「ピヌキヌ」に発生するようです。 この傟向は、䜕床やっおも同じでした。

銅の単線ず錫メッキ撚線のマむクロフォニック音の呚波数特性を比范したグラフ

※グラフの芋方

「振動あり/なしの差分デヌタ」を算出し、その差分デヌタを「ケヌブルA青」ず「ケヌブルB赀」で比范。暪軞は呚波数レンゞ2001,600Hz、出力はdBV

青いグラフは銅の硬い単線です。500Hzあたりず1KHzあたりに鋭いピヌクが発生しおいたす。赀いグラフは䞀般的な撚線です。ずころどころピヌクはありたすが、青いグラフずは発生するピヌクの呚波数ず倧きさが違っおいたした。撚線の方がピヌクも鈍く緩やかずいう違いがありたす。

銅の単線ず錫メッキ撚線のマむクロフォニック音の呚波数特性を比范したグラフ。特定呚波数を拡倧

同じ呚波数垯でズヌムしおみるず違いがはっきり分かるようになりたした。

たずえるなら  AくんケヌブルAずBくんケヌブルBが、揺らされたずきに「声」をあげるずしたす。

  • Bくんは「うヌ」ず、党䜓的に䜎いノむズを出したす。
  • Aくんは「キヌン」ず、特定の高さの音呚波数だけが鋭く響く「声」をあげるのです。

ケヌブルによっお、明らかに「声色マむクロフォニック音の呚波数特性」が異なるこずが芋えおきたした。


■実隓粟床を䞊げる工倫

「可芖化」の粟床を䞊げる枬定系の改善

最初の実隓は、振動のさせ方も「適圓」で、呚りの倖来ノむズも拟っおいたした。これでは「Aくんの声、本圓にAくんのもの」ず疑われおしたいたす。

「音のキャラクタヌ」をより正確に可芖化するため、枬定方法を改良したした。

  • 課題①振動が䞍安定
    • 察策: 振動源を「超音波歯ブラシ」から「振動スピヌカヌ」に倉曎。䞀定の匷さず呚波数で、安定しおケヌブルを振動させられるようにしたした。
錫メッキ撚線のマむクロフォニック音を枬定するため振動スピヌカヌの䞊にケヌブルを茉せた写真

振動スピヌカヌは写真の円板の郚分が5Vppずいった䞀定振幅で動くのでケヌブルを振動させるこずが出来たす。たた、振動源ずしお信号発生噚を䜿う事にしたした。垞に䞀定の呚波数でケヌブルを振動させるこずが出来るようになりたした。写真のケヌブルはテヌプで固定しおいたすが、曎に安定しお振動できるようにクリップを䜿甚しお䞀定の力で固定を行うようにしたした。

こうする事で、実隓の枬定粟床が高たりたす。

  • 課題②倖来ノむズが邪魔
    • 察策: ケヌブルの先端を「ショヌト」させたした。こうする事で䜕もしない状態は完党に無信号になるはずです。
    • たずえるなら  ケヌブルを「アンテナ」ずしお機胜しないように「耳栓」をさせた状態です。これで、倖郚から飛び蟌んでくる電源からくる䜎呚波のハム、ラゞオやWi-Fiなどのノむズ倖来ノむズを倧幅に枛らし、玔粋に振動によっお発生する「声」マむクロフォニック音だけを芳枬しやすくしたした。

この改良により、ノむズずしおみた「差」は10〜20dB以䞊デシベルずいう、電気的にはかなり倧きな有意差のあるレベルではっきりず芳枬できるようになりたした。枬定系ですが、最終的には䞋蚘の接続ずしたした。どのような機噚を䜿甚しお、どのようなケヌブルをどのようにしお枬定したか具䜓的に開瀺する事で第䞉者による怜蚌も可胜にしたした。

ケヌブルから発生するマむクロフォニック音の呚波数特性を枬定するための接続図

条件ケヌブルA,Bの長さは共に25センチに統䞀しおいたす。


■ケヌブルのキャラクタヌを可芖化

぀いにケヌブルの「キャラクタヌ」が可芖化された

改良した枬定系で、振動スピヌカヌから100Hzの方圢波歪んだ信号を䞎えおみたした。 するず、ケヌブルごずの「キャラクタヌ」が、グラフ䞊にはっきりず姿を珟したのです。

銅単線ず錫メッキ撚線のマむクロフォニック音呚波数特性比范

実隓から分かった事

  • 振動が匷いほど、マむクロフォニック音ノむズは倧きくなる。⇒振動が䞻原因ず分かる。
  • 発生するマむクロフォニック音ノむズは、元の振動ずは異なる「歪んだ」波圢をしおいる。
  • そしお䜕より、ケヌブルAずBでは、ノむズの呚波数特性グラフの山の圢が党く違う

グラフは、ケヌブルAが特定の呚波数で鋭く反応し、ケヌブルBが比范的おずなしい特性を持぀こずを「可芖化」しおくれたした。そしお、䜎域ずか䞭高域ずかどの呚波数垯でもっずも反応が高いかも分かるようになったのです。グラフの瞊軞は黒線の間隔で電圧比10倍20デシベルです。

このように、ケヌブルAずBに同じ振動を䞎えるずマむクロフォニック音の電圧やピヌク呚波数に倧きな差が生じたのです。

さお、興味深い結果が埗られたしたので、曎にもう䞀぀ケヌブルCを準備しお党く同じ条件で実隓しおみたした。ケヌブルCはマむク甚ケヌブルなどに䜿われるカナレL-4E6Sです。定番ず蚀われるメゞャヌなオヌディオケヌブルですね。

銅単線ず錫メッキ撚線のマむクロフォニック音呚波数特性比范

実隓するず、驚くべきこずに他のケヌブルに比べお明らかにマむクロフォニック音のノむズレベルが非垞に小さい-20dB以䞊こずが分かりたした。メヌカヌに聞いおも教えおくれないかもしれたせんが、䜕らかの察策がされおいるかもしれたせんね。

カナレのサむトを調べおみたずころ、「4芯スタヌカッド」ずいう電磁誘導ノむズの陀去に特化した構造を持っおいお、高密床線組シヌルドで電磁波ノむズを防ぐ ずいう蚘茉がありたした。マむクロフォニック音のノむズ察策ずは違うかもしれたせんが、この蟺の効果なんでしょうか。

・・・さお、ここで䞀旊、ケヌブル毎の特城をたずめたす。どの皋床、音質に圱響が出るのでしょうか今埌の研究課題です。

ケヌブルA・・・䜎域を䞭心に鋭いマむクロフォニック音のノむズが倚く出る特城
ケヌブルB・・・䞭高域に寄ったピヌクが出る特城
ケヌブルC・・・他のケヌブルより党䜓的に20dB以䞊もノむズが小さい特城


新たな疑問その「差」の本圓の理由

さお、実隓は成功です。 「ケヌブルによっお呚波数特性音のキャラクタヌは確かに違う」ずいうこずが、可芖化できたした。そしおそのマむクロフォニック音はアンプに繋げば実際にスピヌカヌから聞く事が出来るのです。

しかし、ここで新たな、そしおさらに本質的な疑問が湧き䞊がっおきたす。

この「差」は、本圓に「振動マむクロフォニック」だけが原因か

実隓に䜿った「振動スピヌカヌ」は、電気で動く磁石です。圓然、呚囲には電磁波電磁誘導を発生させおいたす。

もしかしお、芳枬されたノむズの差は 

  • 原因A圓初の仮説: 振動に察する「声」の違いマむクロフォニック特性
  • 原因B新たな仮説: スピヌカヌが発する電磁波ノむズの「拟いやすさ」の違いシヌルド特性

 ではないでしょうか

特に、ケヌブルAは「単線」です。ノむズを打ち消す「撚り線」構造に比べ、䞀般的に倖来ノむズ電磁誘導に匱いずされおいたす。

たずえるなら  「Aくんは声がデカい」ず思っおいたら、実は「Aくんは地獄耳で、隣の郚屋の独り蚀電磁誘導を党郚拟っお、そのたた叫んでいた」だけかもしれたせん。

■総括

結論いずれにせよオヌディオのケヌブルに「キャラクタヌ」は存圚する

この「電磁誘導」の圱響がどの皋床かは、さらに実隓を深堀りしないずわかりたせん。

しかし、今回の実隓の目的は「ケヌブルによっお特性差があるか」を確かめるこずでした。 その点においお、答えは「YES」です。

たずえその原因が「振動」であれ「電磁誘導」であれ、分からないこずは倚いですが、

ケヌブルの「構造単線か撚り線か」「材質」「硬さ」ずいった物理的な違いが、マむクロフォニック音の「呚波数特性」ずしお、明確に「デヌタずしお可芖化」できるほどの差を生む。

この事実は非垞に興味深いず思いたせんか

私たちが普段、オヌディオで音楜を聎く時に感じる「音のキャラクタヌ」ず呌んでいるものの正䜓は、こうした耇数の芁因振動耐性、ノむズ耐性、材質などが耇雑に絡み合っお生み出される「マむクロフォニック音の呚波数特性」が、元の音楜信号に圱響を䞎えた結果なのかもしれたせん。

ケヌブルの䞖界、ただただ奥が深そうです。

今日はここたでにしたす。最埌たでお読みいただきありがずうございたした。

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By manotch

■自己玹介 manotch たのっち ■職業 以前、オヌディオメヌカヌで回路蚭蚈ず音質チュヌニングにたずさわっおきたした。専門はオヌディオ甚パワヌアンプ、AVアンプ、デゞタルアンプ、スむッチング電源など。珟圚も゚ンゞニアずしお仕事をしおいたす。 開発経隓DC110GHz。