PC筐体の天板にピエゾピックアップとマイクアンプを設置し振動を観測している写真PC筐体の天板にピエゾピックアップとマイクアンプを設置し振動を観測している写真

こんにちは、manotchです。
以前、オーディオ用ケーブルが振動することで固有の「マイクロフォニック音(振動が電気信号に混入する現象)」が発生し、それが音のキャラクターとして音楽に重畳することを記事にしました。
その後、コンデンサやデジタルアンプでも同様の現象が起きることを周波数特性の差から立証しています。

「これまでの記事へのリンク」


特にオーディオアンプは内部に増幅回路があり、振動で拾ったマイクロフォニック音が10~20倍も大きくなるので振動の影響をモロに受けやすいことも分かりました。手持ちのアンプでは手で基板をたたくと「コンコン」、「ボソボソ」といった音となってスピーカーから普通に聴こえることも分かりました。

これらの記事で紹介したのは、オカルトでも何でもなく、『部品自身が電流や外部からの振動で音が出る』という、れっきとした既知の物理現象です。この現象には、原因によって【磁歪:じわい】【摩擦電気効果】【ローレンツ力】【逆圧電効果】といった名前がついています。

これらを踏まえ、今回は「そもそも機器自体は本当に振動しているのか?」を実測で検証していきます。失敗と危険(!)を乗り越えた、現在までの記録(探求の旅)をお届けします。

1. 振動測定:まずは現状把握

実験はシンプル。PC筐体に録音機(オーディオインターフェイス)の外部マイクを直接接触させて測定ソフトREW(Room EQ Wizard)で解析してみました。私の家のPCはAmazon musicやAmazon Primeなどでオーディオやアニメを楽しむのに使っています。

ZOOM H4 ESSENNTIALオーディオインターフェイスです。外部マイクがあるのでPC筐体に接触させて振動音を拾います。
ZOOM H4 ESSENNTIALオーディオインターフェイスです。外部マイクがあるのでPC筐体に接触させて振動音を拾います。

すると、マイクを天板に触れさせた瞬間、特定周波数に明確なピークが出現。 「やはり、何かが振動している……!」 この確信が、その後のディープな検証への引き金となっていきます。

さて、皆さん静かな時にPCの筐体に耳を近づけてみて下さい。電源やファンから騒音が聴こえませんか?

音が聴こえる=何かが振動しているからです。そう!オーディオ機器は思ったより振動してました。ちなみに手持ちのDACアンプ(FiiO K9AKM)も天板からの振動音を観測しています。どういう理屈なんでしょう。興味深い現象です。

所々の周波数でピークが出現しました。どういう理屈なんでしょう。
所々の周波数でピークが出現しました。どういう理屈なんでしょう。

2. 振動測定:1500Wドライヤー編(失敗)

次にやってみたのが「オーディオ機器の電流を増やすと振動も増えて検出しやすいのではないか?」という仮説のもと、高消費電力の機器を使って負荷をかける実験に挑みました。

名付けて1500Wドライヤー作戦(そのまんま)

電源タップの上に録音機を置いてマイクを接触。電源タップにドライヤーを接続し電源タップが振動しているか振動音を拾ってみようと思います。しかし・・。

電源タップKOJO Crystal 3.1です。おしゃれなデザインです。
電源タップKOJO Crystal 3.1です。おしゃれなデザインです。

音が大きすぎて、マイクが振動ではなく「ドライヤーの騒音」を拾ってしまい失敗。これは仕方ない。(苦笑)

3. 振動測定:1500Wヒーター編(大失敗)

ドライヤーは騒音を拾ってしまうので、振動音のみを拾えませんでした。そこで騒音が出ないヒーターなら振動音のみ拾えるのでは!という事で1500Wヒーター購入。

「電流を増やせば、ケーブルに働くローレンツ力などによる振動も大きくなり、検出しやすくなるはず」という仮説のもと、1500Wの負荷実験に挑みました。

投げ込み型1500Wヒーター。本体はお風呂や水槽に投げ込んで温めるのに使用するようです。
投げ込み型1500Wヒーター。本体はお風呂や水槽に投げ込んで温めるのに使用するようです。

名付けて1500Wヒーター作戦(そのまんま)

しかし、ここで事件発生。強力な電流負荷をかけるべく投入した「投げ込みヒーター」。しかし、これには大きな落とし穴が……。空焚き状態になり、先端が溶けて発火寸前という事態になってしまいました!

1500Wヒーターの先端が溶けて蓋が外れました。プロテクションがかかると勝手に思っていましたが危なかったです。
1500Wヒーターの先端が溶けて蓋が外れました。プロテクションがかかると勝手に思っていましたが危なかったです。

※注意: 水中用ヒーターの空気中での使用は極めて危険です。絶対に真似しないでください。

ヒーター君は残念ながら「空に旅立ち」ました。しかし壊れる直前のFFT波形には、熱膨張に伴う1500Wヒーターのパチパチという音とともにいくつかの周波数帯でピークが発生する反応を観測したのです。「音がする=振動している」という物理の基本を、身をもって体感する結果となりました。残念ながら1回しか実験出来ずデータも記録できませんでした。トホホ。

4. 新兵器「ピエゾマイク」の導入

そこで、空気中の音を拾いすぎてしまう通常のマイクから、物体そのものの振動を拾うピエゾマイク(コンタクトピックアップ)に切り替えて振動を拾う事にしました。ギターなどに貼り付けて使うこのマイクこそ、今回の実験の本命です。

天板に置いてある黒くて丸いのがギターなどの音(振動)を拾うピエゾピックアップです。
天板に置いてある黒くて丸いのがギターなどの音(振動)を拾うピエゾピックアップです。

ギターは弾けないのですが、振動を拾うにはコレ良い形状だと思います。3.5mmのケーブルが付属しているのでzoom h4 essentialにそのまま接続できます。(ただ、信号レベルが小さいのでマイクアンプで増幅する事にしました。)

ピエゾピックアップから出る信号をマイクアンプで増幅すると振動音が分かりやすくなります。それを録音機(オーディオインターフェイス)で記録。USB経由でPCにデータを渡してREWソフトウエアでFFT解析を行います
ピエゾピックアップから出る信号をマイクアンプで増幅している実験の様子。

測定系ですが、左の丸いケースがピエゾピックアップ。これで振動音を拾います。それをマイクアンプ(中央四角い筐体)から録音機(オーディオインターフェイス)に繋いで記録。USB経由でPCにデータを渡してREWソフトウエアでFFT解析を行います

ピエゾマイクとマイクアンプを導入したことで、測定精度は一気に向上。
通常のマイクは「空気の振動(音)」を拾いますが、ピエゾマイクは「物体の振動」を直接振動するものに貼り付けて電気信号に変えます。つまり感度が高いと考えられます。

  • PCの天板: はっきりと振動音がモニターできる。
  • DACアンプ: こちらも天板から振動を検知。

そう!オーディオ機器は、私たちの想像以上に「物理的に」鳴動していたのです。

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オーテクさんのマイクアンプですが、マイク入力3.5mm、6.5mm、ゲイン調整20~50dB、ステレオ-モノラル切り替えスイッチなどの機能があります。実用性があって中々使い勝手の良い製品だと思います。お勧めしておきます。

5. 低周波振動の正体!ファンと筐体の共鳴メカニズム

最新の実験では、興味深いデータが得られています。 ピエゾマイクを天板に接触させると、それまで存在しなかった20〜30Hz付近の低域に大きなピークが現れるのです。動画をご覧ください。注目したいのは一番左側にある大きな低周波のピーク(20-30Hzで約100mV /FFT上のピーク値)です。マイクアンプで約30dB(30倍)ほど増幅しているのでピエゾピックアップの拾った電圧は3.3mV程度と推定されます。

「たかが3.3mV」と思われるかもしれませんが、高感度なアンプの入力段や微細な音楽信号にとって、これだけの電圧の「振動」が天板に乗っているというのは、無視できない影響があると考えられます。

動画で詳細に観察したところ、一つの仮説が浮かび上がりました。 「冷却ファンの回転数の変化(音の高さの変化)」と「振動の周波数」が連動しているようなのです。(音も録音しているので周波数のピークと音の高さの関連をよく聴いて見てください)

  1. 内部ファンの振動が発生
  2. それが筐体(ケース)に伝わる
  3. 筐体全体が「箱鳴り」を起こし、低域の振動として増幅される

このメカニズムが、オーディオ信号にどのようなマイクロフォニック音によるノイズとなり、音質を変化させているのか。非常に興味深いところです。

PC筐体の天板にマイクを接触させたときとマイクを離した時の振動音の差をグラフで比較してみました。

PC筐体の天板にマイクを接触させたときとマイクを離した時の振動音の差。左:マイクを天板に接触。右:マイクを天板から離す。マイクが接触すると20-30Hz付近に大きなピークが発生する事が見えてきた
PC筐体の天板にマイクを接触させたときとマイクを離した時の振動音の差。左:マイクを天板に接触。右:マイクを天板から離す。マイクが接触すると20-30Hz付近に大きなピークが発生する事が見えてきた

マイクを接触させたとたん(左のグラフ)20-30Hz付近に大きなピークが発生している様子が分かります。また、100-500Hzあたりにも山がいくつか発生し大きくなる様子が観測できました。また、ファンの音の高さと連動して周波数が変わる事も分かりました。実験結果よりファンと筐体の振動が共鳴していると推測されます。

今後の展望

振動実験、なかなか興味深かったです。

以前記事にした「部品が振動すると音のキャラクターになる」という実験データと今回の「オーディオ機器は確かに振動している」という実験データが線で繋がり、オーディオ機器の音質が振動で変わるメカニズムの一端が分かってきました。

「筐体を叩いた時の音(材質・構造)が、そのまま音質的な傾向として現れる」

かつて先輩(機構系)から聞いたこの言葉が、今回のFFT解析(20Hzのピークや筐体の共鳴)によって裏付けられました。振動対策は、もはやオカルトの領域ではなく、科学的な根拠に基づいた物理的な音質対策ということが言えそうです。どうやって完成させるかは人間の聴感や感性が重要なのでしょうね。

皆さんもぜひ、一度ご自身のオーディオ機器の天板を軽くコンコンと叩いてみてください。「その振動音」が、あなたのオーディオ機器の隠れたキャラクターになっているかもしれません。

今後はさらに精度を上げた検証(探求の旅)を続けていきたいと思います。


ご覧いただきありがとうございました。次回の検証もお楽しみに!

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By manotch

■自己紹介 manotch まのっち ■職業 以前、オーディオメーカーで回路設計と音質チューニングにたずさわってきました。専門はオーディオ用パワーアンプ、AVアンプ、デジタルアンプ、スイッチング電源など。現在もエンジニアとして仕事をしています。 開発経験DC~110GHz。