FX-AUDIO TUBE-02Jの基本性能を実測していきます。周波数特性(F特)の方も見ておきたいと思います。公式の情報には載っていなかったと思いますので携帯の信号源のアプリとオシロでおおよその特性を見てみたいと思います。音と基本性能は関連性が無いよ!という説もありますが私は設計通りに動作しているかとか、おかしなところはないかという意味で確認しています。

レビュー総集編のリンク先です。まとめ読みできます。

■周波数特性を見てみる

周波数特性で分かることは妙なピークやディップが無いかとか発振といってアンプとして挙動がおかしいとかという点もありますが、音的には低域がどれくらいまで再生できるかとか高音がどれくらいまで再生できるとかもあります。低域がある程度伸びていて低い周波数まで再生できないとちょっと物足りないかもしれません。私は低音スキーですので。低音が出ないのはパターンが悪かったり回路的にもおごれていないときに発生しますのである程度目安になるかなと思います。

低周波の再生ですが概ね3Hz程度まで出ていることを確認しました。これは優秀な特性だと思います。TUBE-02Jは正負電源を使用しているという事です。オーディオアンプで正負電源を使用する理由は出力のDCカットコンデンサを廃止して、よりストレートな音を出すためだと思いますのでその効果で低周波が伸びているんだと推測します。回路が進歩して生まれた正負電源ですが現在では音質向上のため良く使われています。ネックは電源が2回路になるのでコストが高いことですがFX-AUDIOさんは逆にそれを売りにしていますね。

それからそんな低い音は再生音に入っていないのでは?という説もあるかと思いますが、試しに低い周波数をカットするとあれ?音に風のような低い低音の押し出しが無いなぁ・・・という感じになった記憶があります。その為、低い周波数まで再生できるのは重要だと考えています。一方高い周波数は私はあれこれ試したことが無いので関連性がまだ良く分かっていません。高い周波数は15KHzくらいまでは聴こえますが20KHzともなると聴こえない領域です。ただ、最近はハイレゾ再生でも20KHzを超えて100KHzまで再生できる装置もざらですから因果関係はあるんだろうなと思います。再生側の余裕(マージン)という考え方もあります。

高周波の再生ですが21KHz程度まで出ていることを確認しました。20KHz以上再生できているので問題なさそうです。ただ、携帯の再生が20KHz以上出ているのかという疑問もありますので大雑把な特性だと思って下さい。いい測定器欲しいなぁ。

オペアンプの出力にバッファーが入っているようですがどうもヘッドホンジャックの写真上下のスペースにあるトランジスタ数個の回路がそれらしいように思います。それで電流増幅しているのである程度ヘッドホンやイヤホンに流せる電流供給能力を確保していると推測します。また、DCカットコンデンサのような低周波をカットするような部品が入っていないので再生周波数も低域側が伸びていると推測します。その辺はうたい文句に書いていないのであくまで推測ですが。

■電圧供給ドライブ力を見てみる

電流の供給能力と並んで重要なのが電圧の供給能力です。電圧が高いほどハイインピーダンスなヘッドホンでもドライブしやすくなります。もちろんローインピーダンスなヘッドホンも鳴らせます。ここ最近はオペアンプの電圧を確認するのと正弦波を入れたときのクリップする電圧を両方測定しています。TUBE-02Jは電源電圧±8.8Vという事ですので理論的には16.6Vppでるのですがロスもあるのでそこまでは出ないでしょう。

今回は携帯から正弦波を入れてみましたが振幅が5~6Vppくらいしか取れませんでしたので恐らくゲインが欲張っていないからだと推測します。ヘッドホンアンプは余りゲインを上げるとノイズも耳につくようなので製品によってはパワーアンプやプリアンプのようにゲインを上げないようです。クリップするまで正弦波を入れるためPC側からドライブ電圧の取れるFiiO K7 DAC AMPに接続してLINE OUTから最大振幅まで出力を上げてみます。

1KHz無負荷ですが12.72Vpp出ていることを確認しました。それでもクリップレベルまで達しなかったので出力電圧はもっと出るかもしれません。理由はゲインがクリップするほど高くないからだと思います。測定していませんがそれほど欲張っていないからでしょう。

出力電圧の供給能力ですがぺるけさんのヘッドホンアンプ本でも電源は14Vくらいで設計しているようですのでこれくらいがいい所なのかもしれません。まずまず良さそうに思います。総じて電圧供給能力も高くドライブ能力が高いといううたい文句は実現できているように思います。それで音離れというか音の出方がいいのかな。鳴りっぷりがいい感じです。

■コスパはどうなのか?

中身を確認しましたがコスパはイイと思います。価格は7,000~8,000円のあたりですが日本メーカーが作ったらどうでしょう。2倍くらいはするかもしれないと思いました。本当は日本メーカーさんの作ったヘッドホンアンプがあれば買いたいですけどね。これくらいの価格だと結構売れないと利益が出なさそうです。その為、日本メーカーは製品が出ないのかな。中国メーカーだから安かろう悪かろうというイメージは持っていないです。ただ、メーカーによる差はあると思いますのでしっかりしたメーカーさんのを選んだらいいんじゃないかと思います。しかし、中国メーカーはそれにしても開発力ありますね。次から次へと新製品を出してきます。しかも結構安価なので買ってみたくなる製品は多いです。


■お楽しみ!球転がしをしてみる1(北京6J1-T)

先回購入したNobsound NS-08Eの時に真空管の球を別のに交換して音の変化を楽しみました。今回も球転がししてみたいと思います。最初についてくる球は6K4です。6K4の時のファーストインプレッションからどう変わるかです。公式を見てみると6J1を推奨しているので6J1を購入して見ることにしました。それからネットで調べると先回購入した、米国GE製 JAN 5654W 真空管アンプ交換用真空管2個セット 軍用選別グレード品・・・もコンパチで使用できそうです。そこで6K4と6J1と5654Wを付け替えて音を聴いて見ます。

シールが貼ってありました。軍用規格品高精度選別管・・・なんだか凄そうです。しかし、何を選別したんでしょう。ゲインとか合わせてくれるといいですが。

新品ですよ。新品!ん?箱の表には1981年7月ロットって書いてあったけど・・・。未使用品という事で新品なんでしょうか。謎ですね。ビンテージものと言えなくもないです!

梱包を開けるとこんな感じでした。印字は北京とかいてあるようです。型番は6J1-Tです。6K4はちょっと外観が曇っていましたのでどうかなと思ったんですがこちらはクリアな感じです。足はちょっとまがっていますが・・・。

6K4を外して6J1に差し替えました。公式の推薦する球ですが果たして。

機器の構成はFiiO K7のLINE OUTにFX-AUDIO TUBE-02Jを接続し、出力はヘッドホンsennheiser HD660SとBeyerdynamic DT990PROとで聴いて見ます。曲は最近リファレンスで聴いている宇多田ヒカル、結束バンドなど聴いて大体の傾向をつかんでみます。TUBE-02Jはドライブ力が高いのか6K4でも鳴らす力があるように思いますが6J1に変えてみると中高音に艶が乗ってきていわゆる真空管の良さが出るような方向性に思いました。上品な感じですね。

クラッシックにも合うと思いましたので他の曲で、リアデイルの大地にて。夢見クジラさん・・・を聴いて見ます。こちらは広がり感のある小編成の曲ですが低音のパワー感もあるので音にも厚みと重厚さが出る感じです。

試しに念のため元の6K4に戻して見ると悪くはないですがもうちょっと華が欲しいかなという感じです。これは仕方ないですが好みの方の球の音を聴くと球を元に戻しにくいですね。

中高音の華やかさとそれからシンバルのようなチーンという音も響きがきれいに聴こえます。

欲が出てきたので他にイヤホンでも聴いて見ます。sennheiser ie300に変更してみるとこれも組み合わせ的には良い感じです。ie300は元々低音モリモリで中高音からは艶やかなボーカル、弦の表現など魅力のある再生音を聞かせてくれるモデルですがTUBE-02Jと6J1の組み合わせは音調が合うと思います。

いい買い物をしました。他の真空管ヘッドホンアンプでも6J1は使えそうなので色々試して見たいと思います。休日がつぶれる!(笑)

■お楽しみ!球転がしをしてみる2(GE 5654W)

それから以前購入した5654Wにも差し替えて聴いて見ることにします。

品名ですが、米国GE製 JAN 5654W 真空管アンプ交換用真空管2個セット 軍用選別グレード品・・・です。こちらはMADE IN USAの印字が有りますね。音の差はどうでしょう。興味がわきます。

さて、音は6J1より更に低音が図太くなった感じでしっかりしています。中高音にかけては6J1の方が艶やかな感じかな。どちらが良いかは好みの問題だと思いますが私は6J1の方が好みでした。以前聴いたNobsound NE-08Eの6J3の北京管も5654Wに差し替えて聴いたのですが6J3の方が好みでした。何というか艶っぽいんですよね。どうも球を指ではじいたときに出るマイクロフォニックノイズの音と音調とが関係ありそうな気がしているのですが北京管は5654Wより大きめに出るんですよね。それで音に色味がついているような気がしています。5654Wは外観から見た中身がしっかりした作りに見えますのでその差かな。5654Wは2本並べても中身は同じ構造で同じ部品を使っていて・・・というように当たり前といえば当たり前の構成ですが6J1ってどうみても左右で部品の向きが違ったりとかばらつきがあるんですよね。しかし音は良いので面白いです。

5654Wの良いところは何といっても光り方ですね。上の写真のようにちゃんと赤く光ります。これが好きな方は5654Wの方をお勧めします。6J1は光るのですがちょん・・・といった感じです。6J1か5654Wは好みですがどちらが良いかは迷いますね。6K4に比べるとどちらも良さがあると思います。

今日はここまでにします。最後までお読みいただきありがとうございました!


上記の6J1は公式推奨の球です。5664Wは人気のある球ですね。

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By manotch

■自己紹介 manotch まのっち ■職業 以前、オーディオメーカーで回路設計と音質チューニングにたずさわってきました。専門はオーディオ用パワーアンプ、AVアンプ、デジタルアンプ、スイッチング電源など。現在もエンジニアとして仕事をしています。