真空管ヘッドホンアンプFX-AUDIO TUBE-02レビュー総集編です。真空管ヘッドホンアンプの魅力って何でしょうか。やっぱり外観の面白さ、どのモデルもそれぞれ個性的な音で面白いですね!ヘッドホンやイヤホンとの組み合わせも楽しめそうですし、球を変更したり、オペアンプを交換して見たりとオーディオの楽しさを満喫できるガジェットだと思います。
結論から言うとTUBE-02Jですが音太いなーです。ヘッドホンを鳴らす力は高いものを持っていると思いました。何というか楽々と音離れする感じなんですよね。電源が別売なので結構ワッテージが強力なACアダプター買ったのがあって付けたのでそのせいかなぁ。後、オペアンプに供給される電源電圧も実測したら17.6Vとかなり高かったのでハイインピーダンスのヘッドホンなどの駆動に余裕があるのではないかと思います。もちろん、通常のインピーダンスのヘッドホンやイヤホンも駆動できそうです。
まあ、今回もその辺謎だらけな所がありますので、分解したりして音の魅力の秘密に迫ってみたいと思います。これは楽しみ!
目次
- 1 ■電源は別売なので注意!
- 2 ■スペックを確認してみる
- 3 ■開梱の儀式
- 4 ■どうやって音を出すのか?
- 5 ■音のファーストインプレッションは?
- 6 ■TUBE-02Jの分解方法は?
- 7 ■内部部品レイアウトをNobsound NS-08Eと比較する
- 8 ■使用パーツを見てみる
- 9 ■秘密兵器登場
- 10 ■基板裏のパターンを見てみる
- 11 ■部品の配置が分かるようにしてみる
- 12 ■基板裏からみた部品配置も分かるようにしてみる
- 13 ■周波数特性を見てみる
- 14 ■電圧供給ドライブ力を見てみる
- 15 ■コスパはどうなのか?
- 16 ■お楽しみ!球転がしをしてみる1(北京6J1-T)
- 17 ■お楽しみ!球転がしをしてみる2(GE 5654W)
- 18 ■お楽しみ!オペアンプを交換してみる
- 19 ■ん?音がおかしくなった!
- 20 ■イヤホンと組み合わせて聴いて見る
- 21 ■総括
■電源は別売なので注意!
前回レビューしたKOAG HA-Sは電池駆動で音はSN感が良くなかなか良かったのですがいかんせん電源の切り忘れが多くて電池が無くなるとならなくなるという欠点がありました。HA-Sの場合は単一の充電池を購入し電池がなくなったら充電するという手で解決しました。
今回のヘッドホンアンプは何と電源は別売です。付いていません!あまりよく確認せずに購入する方、いるんじゃないでしょうか。
逆に考えると好きな電源をつなげられるな!という事で以前、Nobsoundのデジタルアンプなどで使用した実績のあるACアダプターを接続しています。別売の分、本体にお金がかかっているとも言えますね。
それで今回の真空管ヘッドホンアンプに接続したACアダプターは下の写真です。まあ、アマゾンさんのおすすめ電源になっていたので購入しました。安価なのでとりあえずおすすめならいいだろうという事で購入したのですが、カーオーディオアンプのCA215と組み合わせて鳴らした時もスピーカーからノイズも出ないし、鳴りっぷりも良かったのでこれはいい買い物をしました。
今回の真空管ヘッドホンアンプでも鳴らして見ましたが気になるノイズは出ませんでした。KOAG HA-Sの時に購入した別のメーカーのAC電源はノイズが乗っていたので、メーカーによるのかもしれないです。それから今回のACアダプターは12V,6Aなので72W出力です。真空管ヘッドホンアンプの電源はそんなに電力は要らないと思いますのでオーバースペックだと思いますが、音には安定感や余裕が出ると思います。瞬時電流供給能力が高くなって音量が大きくても電圧が落ちなくなるので低音も出ると思います。今はCA215も鳴らしていないのでこちらを使うことにします。
12V汎用ACアダプター USB DC12V 6A LED テープライト・ビデオカメラ・監視カメラ用 AC100V→DC12V 安定化電源
12V汎用ACアダプター USB DC12V 6A LED テープライト・ビデオカメラ・監視カメラ用 AC100V→DC12V 安定化電源
【後日談】その後のオシロの測定でACアダプターからスイッチングノイズが出ていることが分かってきました。と言ってもこのACアダプターが悪いわけではなくどのスイッチング電源でもノイズは出ているようです。そこで別記事にオーディオの電源強化をしてみようというテーマで公開することにしました。TUBE-02Jもさらに良い音で楽しめるようになりました!
■スペックを確認してみる
FX-AUDIOさんのTUBE-02Jですが結構、痒い所に手が届くというか真空管ヘッドホンアンプを開発していてユーザーさんの声を反映しながら改良しているようで企業姿勢がいいなと思いました。いくつかあるのですが真空管とオペアンプが交換できるようになっていることで公式サイトでも交換用の球やオペアンプが入手できることです。動作実績のある部品が公式から入手できるのは安心感があります。
それから、ハイローのゲイン切り替えがついているのでヘッドホンやイヤホンでさーっというホワイトノイズが気になる場合はローゲインに切り替えることでノイズを抑えることが出来ます。入力系統が3.5mmステレオミニジャックとステレオRCA端子の二系統があってリアパネルのスイッチで切り替えられるのも使い勝手が良くて便利です。
- 標準付属真空管として6K4を採用、真空管+オペアンプ+MOSFET
- 真空管による前段増幅回路、高音質なヘッドフォンアンプ回路
- 幅広いヘッドフォンに対応するゲイン切り替え機能
- 真空管用昇圧回路はTUBE-00Jタイプを踏襲
入力端子:[LINE 1] ステレオRCA端子(金メッキ仕様)
[LINE 2] 3.5mmステレオミニジャック (4極プラグは動作保証対象外)
出力端子:標準ヘッドフォンジャック(Φ6.3mm TRSフォーンジャック)
電源:定格電圧DC12V 電流容量2A以上 ※ACアダプター別売
電源コネクター:外径5.5mm 内径2.1mm (センタープラス仕様)
対応インピーダンス:16〜300Ω
機能:ゲイン切替機能(0dB・-10dB)フロントパネルトグルスイッチ
2系統入力切替機能(LINE1・LINE2)バックパネルスライドスイッチ
付属品:取扱説明書
6K4真空管 2本(種類は曙光・北京・上海のいずれかのペアとなります※お選びいただけません)
サイズ:幅98mm×奥行き99mm×高さ33mm(真空管含めた最大74mm)(※突起部含まず)
本体重量:約275g
■開梱の儀式
さて、時間を少しさかのぼって開梱です。どんな中身になっているのでしょうか。わくわく。
質素な梱包です。全然問題ありません。箱自体は傷もへこみもありませんでした。良好です!
開梱してみると、こんな感じです。本体と真空管が2本ついてきます。電源はありません!別途購入する必要があります。
ぺら紙ですが取説が入っています。Nobsoundさんの真空管ヘッドホンアンプを購入した時はぺら紙さえはいっていなかったのでちょっと嬉しいです。(まぁ、取説無くても動かせますが、)
■どうやって音を出すのか?
では早速、音を出して見たいと思います。まずは箱から本体を取り出して真空管を2本、本体に取り付けます。コツはまっすぐに入れる。です。あまりぐりぐりしていれると真空管の足が曲がる場合があります。そして奥のドンツキまで差し込むことです。
簡単な接続例です。写真はiphone11proからlightning to usbケーブルを経由してUSB DACのFiiO KA3に接続し、3.5mmステレオケーブルでTUBE-02Jの背面の入力端子に接続しています。また、電源は先ほど紹介したACアダプターの12Vのコネクターを背面の電源端子に接続します。電源の極性があるので注意してください。ACアダプターはセンタープラス(端子の中側がプラス)です。紹介したACアダプターはセンタープラスなのでそのまま差し込んでもOKです。
■音のファーストインプレッションは?
さあ、早速音出ししてみます。どきどき。電源ランプのインジケーターは赤色ですね。むっ?真空管ですが殆ど光らないですね。ここは残念。6K4という球は全面がフィラメントで覆われていて光るのは背面のちょっとだけです。公式によると6J1がおすすめらしいです。こちらは光るのかな。これは後で購入検討しましょう。やっぱりちょっとフィラメントが赤く光って欲しいですねー。6J3は持っていますがそれなりにカッコよく光りますので。
その代わり?下部から白色のLEDで照明しているようです。これってNobsoundさんの真空管アンプでも青色のLED照明があったのですが真空管アンプの流行なのかな。
音の方はというと真空管アンプは大抵すぐに音が良くならないですね。最初はちょっと眠たいようなぼやけた感じですが待っていると音がくっきりして目が覚めたような音になってきます。真空管が暖まるのがいいのかなぁ。
音のファーストインプレッションですがNobsound NS-08E真空管ヘッドホンアンプとの比較になりますが、NS-08Eは中低音にパンチがあって高音出ないなーという感じでしたが、こちらは音が太くて低音も出るのですが高音も出るという感じで周波数レンジが広がって聞こえます。それからTUBE-02Jの方はドライブ能力が高い感じでゼンハイザーのHD660Sなどならしていても良く鳴るなぁというインプレッションです。何というか音離れが良いんですよね。これの理由は今の所わかりませんが後で分解して調べてみることにしたいと思います。前回の時もそうですがロクに音も聞かずにすぐ分解するという・・・。
オーディオ機器を分解すると勉強になって面白いです。改造できるようになると音も色々変わるので更に面白いですね!比較的安価で楽しめる真空管ヘッドホンアンプは良いアイテムだと思いました。さあ、分解してみましょう。TUBE-02Jの魅力はどこにあるんでしょうね。
■TUBE-02Jの分解方法は?
FX-AUDIO TUBE-02Jですが内部のオペアンプが交換できる前提の構造になっているので分解は容易になっています。フロントパネルは写真の4か所の2.5mm六角ネジを外します。
リアパネルの方は2mm六角レンチでネジを取り外します。RCAのピンジャックのネジも外します。真空管を外さないとケースが外れませんのであらかじめ抜いておきます。
【注意】分解すると故障の原因になったり感電の危険があります。くれぐれも分解するときは自己責任でお願いします。
amazonの商品説明の写真に内部の説明がありますので回路のブロック図など詳細を確認したい場合はそちらをご覧ください。ここまで詳細に説明しているメーカーさんって余り見かけないですが、こだわりを感じます。イイですね!
【後日談】今現在ではTUBE-02Jの方から後継機のTUBE-07Jがリリースされているようです。
中央に配置されている茶色いスリーブの部品は電源用の高耐圧電解コンデンサです。400V耐圧で日本メーカーのニチコン製です。日本製の電解コンデンサは品質的に安心感があります。TUBE-02Jもそうですが最近の真空管アンプはスイッチング電源を使用しています。スイッチング電源などは特に経時変化に強くて破損しないようなものがいいですね。
■内部部品レイアウトをNobsound NS-08Eと比較する
左がFX-AUDIO TUBE-02Jで右がNobsound NS-08Eです。
こうして比較すると両社の設計コンセプトが見えてくると思います。Nobsound社はとにかく小型コンパクトな設計をしたかったのだと推測します。横幅が特に狭くできていますね。一方、FX-AUDIO社はそこまでコンパクトな設計にこだわっていないように見えます。それでも横幅98mmなので十分コンパクトなんですが。
そのためTUBE-02Jはそこそこ空きがあるので部品を余分における余裕があります。回路構成は真空管プラスオペアンプにFETのバッファーという事ですが電源の出カップリングコンデンサも、オペアンプ周りの入出力コンデンサやオペアンプのデカップリングコンデンサも電解コンデンサがそれぞれ配置されていると推測されます。一般的なセオリーに沿った回路になっていそうです。かならずしもセオリー通りが良いという訳ではないと思いますが特性や音質的にはある程度狙って一定レベルの音質が出せるメリットがあると思います。
一方、NE-08Eは電源周りのコンデンサや入出力のコンデンサが配置されているか良く分かりませんでした。セラミックの小型チップコンデンサで代用されていると推測します。この辺は電解コンデンサだとスペースが必要なのでそうしたと思いますがオーディオ的にはどうかなぁと思います。高音が出ないのはこの辺が原因かもしれません。
『NS-08Eちゃん』えーっ、そんなぁ。manotchさんなんとかしてー。
『manotch』とは言ってもイマイチパターンが追えていないし回路図もないのでどの辺のコンデンサを変えればよいか分からないんだよなぁ。それと良いパーツを持っていれば交換するくらいは出来るかもしれないけど。
『NS-08Eちゃん』・・・恒例のNobsound社の真空管ヘッドホンアンプNS-08Eの擬人化です。中低音にパンチがあって小型コンパクトな可愛らしいアンプです。別の項で記事にしていますのでそちらも見て下さいね。
『manotch』まぁ、コンパクトで場所を取らないのは大きな売りだと思うよ。見た目もおしゃれだし。
『NS-08Eちゃん』そうですよね~。
■使用パーツを見てみる
TUBE-02Jですがパーツはちょっといいものを使用しようとする意気込みが感じられます。写真左下の青い2個の大型部品は入力のカップリングコンデンサですが、以前300Bの真空管アンプで検討した時、入力のカップリングコンデンサで音がコロコロ変わるという経験をしました。秋葉原で同じ容量でメーカーを色々変えて集めて交換した所、音が柔らかかったり、固かったりとかです。柔らかい音のコンデンサにして後々先輩に聴いてもらったら『音柔らかいねー』と褒められました。(同じこと言ってると思った)RCAケーブルから信号が入って一番最初の部品になるので後々まで音に効いてくるのでしょうね。
それにしても高耐圧のコンデンサのせいか大型部品がおごられています。真空管アンプの音に魅力があるのはこの辺にもあるかなと考えています。大型だから音がいいという訳ではありませんが部品による音の差はあるので色々試して見た結果がこの青色の大型コンデンサなんでしょう。
右下のDC12V入力のコネクタの近辺に赤色のワイヤが巻いてある部品があるのですがこれはトロイダルのコイルのようです。DC12Vからノイズが入ってもここで減衰するようになっています。ある程度ACアダプターの方からノイズが入ってもいいような配慮だと思います。Nobsoundの方はコイルが入っていないように見えます。
■秘密兵器登場
光学顕微鏡ですがスマホの画面に映せるんですよね。これは安価な割には便利。
下の写真は購入したものですがもう販売されていません。類似品が出回っていますので興味がある方はamazonさんで光学顕微鏡、スマホなどで検索すると出てきますよ。
電源周りのICです。5430という型番のようです。
裏面の半田付けです。クリンチ(足を折り曲げる加工)はしていないようです。単純なカットです。白色のレジストがかかっているので分かりにくいですが半田付けの周りはリング状にパターンが抜いてあって浮島になっています。この部分は表層で接続されているようです。この手の部品ははんだ付け箇所を温めて交換できそうです。その為、電解コンデンサは交換できそうな感じです。
■基板裏のパターンを見てみる
基板裏のパターンも見てみることにします。配線のパターンは重要で部品を生かすも殺すもパターン次第です。ダメなパターンだと何をやっても音がダメだった記憶があります。こちらの基板は両面基板のようで、表裏にパターンがありますので回路図が無いので全容は良く分かりませんが表の部品と公式から出ているブロック図を基にすればなんとなくイメージが分かりますね。
■部品の配置が分かるようにしてみる
写真のままだともう一つよく分からないので、主要なパーツの配置だけ書きこんで見ました。はい!こちら!
部品のレイアウトはなんとなく信号の流れが読める感じで良さそうに思いますがどうなんでしょうね。ヘッドホンジャックが大きいので場所的に配置に苦労しそうですが敢えて6mmのジャックを付けたのは音質への配慮でしょうか。しっかりしたコネクタとかボリュームとか不思議と音に効くんですよね。音もしっかり出る様になった記憶があります。
よくよく見ると電源のインダクタは閉磁路タイプを使用しています。インダクタは開磁タイプもあってこちらは磁束が外部に漏れやすくてノイズが出やすいですが閉磁路タイプは磁束が外部に漏れない構造になっていてノイズが出にくいです。閉磁路タイプの方が構造が複雑で価格も高いのですが気を使っているかもしれません。電源のトロイダルコイルといいノイズ対策を考えているように思いました。ノイズの方はスペアナを使ってアンテナで拾ってみるとかすると高調波の周波数成分やノイズレベル差が分かります。スペアナは手持ちはありませんが最近は凄く安価なものが出回っているのでテストするのも面白いかもしれません。
ノイズ対策って何W出力!とは違って『売り』になりにくいのですが対策を入れている感じなので好感が持てます。聴感上のノイズが出ると興ざめになるのですがその点、FX-AUDIOのTUBE-02Jはイイですね。SN感がいいです。気になるノイズが出ていません。
■基板裏からみた部品配置も分かるようにしてみる
こうなったらということで、基板裏からも部品配置を書いて見ました。
以前オーディオテクニカさんのヘッドホンアンプを分解したときは基板裏にPGND(パワーグランド)とかシルク印刷してあったのでGNDとかどこにあるか分かりやすいですが書いていないので推定するしかありません。その点、TUBE-02はGNDとか書いているわけではありませんが電源ブロックの電解コンデンサが並んでいるのでここのマイナスがGNDと思えばいいのかなと思います。
高耐圧コンデンサですがテスターで測定した所、97Vでした。400V耐圧なのでもっと高い電圧がかかっているかもしれないとビビっていたのですが97Vだったのでちょっと安心です。(マテマテ)
あ、電圧測定は危ないです。ショートさせるとあっという間に壊れます。分解や測定はくれぐれも自己責任でお願いします。
それから最近はヘッドホンのドライブ力を確認しておくためオペアンプの電源電圧も測定することにしました。オペアンプは17.6Vですね。amazonさんの製品説明では正負電源とあったのですがどうなんでしょう。17.6Vの場合は理論上出力が17.6Vppまで出るわけですがロスもあるのでそこまで出ないと思います。ただ、これくらい出ていれば最近の他のヘッドホンアンプを測定した結果から十分そうに思います。
【後日談】後で調べたらオペアンプ部は正負電源という事で±8.8Vでした。8.8×2=17.6Vという事でつじつまはあっていますね。
FX-AUDIO TUBE-02Jの基本性能を実測していきます。周波数特性(F特)の方も見ておきたいと思います。公式の情報には載っていなかったと思いますので携帯の信号源のアプリとオシロでおおよその特性を見てみたいと思います。音と基本性能は関連性が無いよ!という説もありますが私は設計通りに動作しているかとか、おかしなところはないかという意味で確認しています。
■周波数特性を見てみる
周波数特性で分かることは妙なピークやディップが無いかとか発振といってアンプとして挙動がおかしいとかという点もありますが、音的には低域がどれくらいまで再生できるかとか高音がどれくらいまで再生できるとかもあります。低域がある程度伸びていて低い周波数まで再生できないとちょっと物足りないかもしれません。私は低音スキーですので。低音が出ないのはパターンが悪かったり回路的にもおごれていないときに発生しますのである程度目安になるかなと思います。
低周波の再生ですが概ね3Hz程度まで出ていることを確認しました。これは優秀な特性だと思います。TUBE-02Jは正負電源を使用しているという事です。オーディオアンプで正負電源を使用する理由は出力のDCカットコンデンサを廃止して、よりストレートな音を出すためだと思いますのでその効果で低周波が伸びているんだと推測します。回路が進歩して生まれた正負電源ですが現在では音質向上のため良く使われています。ネックは電源が2回路になるのでコストが高いことですがFX-AUDIOさんは逆にそれを売りにしていますね。
それからそんな低い音は再生音に入っていないのでは?という説もあるかと思いますが、試しに低い周波数をカットするとあれ?音に風のような低い低音の押し出しが無いなぁ・・・という感じになった記憶があります。その為、低い周波数まで再生できるのは重要だと考えています。一方高い周波数は私はあれこれ試したことが無いので関連性がまだ良く分かっていません。高い周波数は15KHzくらいまでは聴こえますが20KHzともなると聴こえない領域です。ただ、最近はハイレゾ再生でも20KHzを超えて100KHzまで再生できる装置もざらですから因果関係はあるんだろうなと思います。再生側の余裕(マージン)という考え方もあります。
高周波の再生ですが21KHz程度まで出ていることを確認しました。20KHz以上再生できているので問題なさそうです。ただ、携帯の再生が20KHz以上出ているのかという疑問もありますので大雑把な特性だと思って下さい。いい測定器欲しいなぁ。
オペアンプの出力にバッファーが入っているようですがどうもヘッドホンジャックの写真上下のスペースにあるトランジスタ数個の回路がそれらしいように思います。それで電流増幅しているのである程度ヘッドホンやイヤホンに流せる電流供給能力を確保していると推測します。また、DCカットコンデンサのような低周波をカットするような部品が入っていないので再生周波数も低域側が伸びていると推測します。その辺はうたい文句に書いていないのであくまで推測ですが。
■電圧供給ドライブ力を見てみる
電流の供給能力と並んで重要なのが電圧の供給能力です。電圧が高いほどハイインピーダンスなヘッドホンでもドライブしやすくなります。もちろんローインピーダンスなヘッドホンも鳴らせます。ここ最近はオペアンプの電圧を確認するのと正弦波を入れたときのクリップする電圧を両方測定しています。TUBE-02Jは電源電圧±8.8Vという事ですので理論的には16.6Vppでるのですがロスもあるのでそこまでは出ないでしょう。
今回は携帯から正弦波を入れてみましたが振幅が5~6Vppくらいしか取れませんでしたので恐らくゲインが欲張っていないからだと推測します。ヘッドホンアンプは余りゲインを上げるとノイズも耳につくようなので製品によってはパワーアンプやプリアンプのようにゲインを上げないようです。クリップするまで正弦波を入れるためPC側からドライブ電圧の取れるFiiO K7 DAC AMPに接続してLINE OUTから最大振幅まで出力を上げてみます。
1KHz無負荷ですが12.72Vpp出ていることを確認しました。それでもクリップレベルまで達しなかったので出力電圧はもっと出るかもしれません。理由はゲインがクリップするほど高くないからだと思います。測定していませんがそれほど欲張っていないからでしょう。
出力電圧の供給能力ですがぺるけさんのヘッドホンアンプ本でも電源は14Vくらいで設計しているようですのでこれくらいがいい所なのかもしれません。まずまず良さそうに思います。総じて電圧供給能力も高くドライブ能力が高いといううたい文句は実現できているように思います。それで音離れというか音の出方がいいのかな。鳴りっぷりがいい感じです。
■コスパはどうなのか?
中身を確認しましたがコスパはイイと思います。価格は7,000~8,000円のあたりですが日本メーカーが作ったらどうでしょう。2倍くらいはするかもしれないと思いました。本当は日本メーカーさんの作ったヘッドホンアンプがあれば買いたいですけどね。これくらいの価格だと結構売れないと利益が出なさそうです。その為、日本メーカーは製品が出ないのかな。中国メーカーだから安かろう悪かろうというイメージは持っていないです。ただ、メーカーによる差はあると思いますのでしっかりしたメーカーさんのを選んだらいいんじゃないかと思います。しかし、中国メーカーはそれにしても開発力ありますね。次から次へと新製品を出してきます。しかも結構安価なので買ってみたくなる製品は多いです。
■お楽しみ!球転がしをしてみる1(北京6J1-T)
先回購入したNobsound NS-08Eの時に真空管の球を別のに交換して音の変化を楽しみました。今回も球転がししてみたいと思います。最初についてくる球は6K4です。6K4の時のファーストインプレッションからどう変わるかです。公式を見てみると6J1を推奨しているので6J1を購入して見ることにしました。それからネットで調べると先回購入した、米国GE製 JAN 5654W 真空管アンプ交換用真空管2個セット 軍用選別グレード品・・・もコンパチで使用できそうです。そこで6K4と6J1と5654Wを付け替えて音を聴いて見ます。
シールが貼ってありました。軍用規格品高精度選別管・・・なんだか凄そうです。しかし、何を選別したんでしょう。ゲインとか合わせてくれるといいですが。
新品ですよ。新品!ん?箱の表には1981年7月ロットって書いてあったけど・・・。未使用品という事で新品なんでしょうか。謎ですね。ビンテージものと言えなくもないです!
梱包を開けるとこんな感じでした。印字は北京とかいてあるようです。型番は6J1-Tです。6K4はちょっと外観が曇っていましたのでどうかなと思ったんですがこちらはクリアな感じです。足はちょっとまがっていますが・・・。
6K4を外して6J1に差し替えました。公式の推薦する球ですが果たして。
機器の構成はFiiO K7のLINE OUTにFX-AUDIO TUBE-02Jを接続し、出力はヘッドホンsennheiser HD660SとBeyerdynamic DT990PROとで聴いて見ます。曲は最近リファレンスで聴いている宇多田ヒカル、結束バンドなど聴いて大体の傾向をつかんでみます。TUBE-02Jはドライブ力が高いのか6K4でも鳴らす力があるように思いますが6J1に変えてみると中高音に艶が乗ってきていわゆる真空管の良さが出るような方向性に思いました。上品な感じですね。
クラッシックにも合うと思いましたので他の曲で、リアデイルの大地にて。夢見クジラさん・・・を聴いて見ます。こちらは広がり感のある小編成の曲ですが低音のパワー感もあるので音にも厚みと重厚さが出る感じです。
試しに念のため元の6K4に戻して見ると悪くはないですがもうちょっと華が欲しいかなという感じです。これは仕方ないですが好みの方の球の音を聴くと球を元に戻しにくいですね。
中高音の華やかさとそれからシンバルのようなチーンという音も響きがきれいに聴こえます。
欲が出てきたので他にイヤホンでも聴いて見ます。sennheiser ie300に変更してみるとこれも組み合わせ的には良い感じです。ie300は元々低音モリモリで中高音からは艶やかなボーカル、弦の表現など魅力のある再生音を聞かせてくれるモデルですがTUBE-02Jと6J1の組み合わせは音調が合うと思います。
いい買い物をしました。他の真空管ヘッドホンアンプでも6J1は使えそうなので色々試して見たいと思います。休日がつぶれる!(笑)
■お楽しみ!球転がしをしてみる2(GE 5654W)
それから以前購入した5654Wにも差し替えて聴いて見ることにします。
品名ですが、米国GE製 JAN 5654W 真空管アンプ交換用真空管2個セット 軍用選別グレード品・・・です。こちらはMADE IN USAの印字が有りますね。音の差はどうでしょう。興味がわきます。
さて、音は6J1より更に低音が図太くなった感じでしっかりしています。中高音にかけては6J1の方が艶やかな感じかな。どちらが良いかは好みの問題だと思いますが私は6J1の方が好みでした。以前聴いたNobsound NE-08Eの6J3の北京管も5654Wに差し替えて聴いたのですが6J3の方が好みでした。何というか艶っぽいんですよね。どうも球を指ではじいたときに出るマイクロフォニックノイズの音と音調とが関係ありそうな気がしているのですが北京管は5654Wより大きめに出るんですよね。それで音に色味がついているような気がしています。5654Wは外観から見た中身がしっかりした作りに見えますのでその差かな。5654Wは2本並べても中身は同じ構造で同じ部品を使っていて・・・というように当たり前といえば当たり前の構成ですが6J1ってどうみても左右で部品の向きが違ったりとかばらつきがあるんですよね。しかし音は良いので面白いです。
5654Wの良いところは何といっても光り方ですね。上の写真のようにちゃんと赤く光ります。これが好きな方は5654Wの方をお勧めします。6J1は光るのですがちょん・・・といった感じです。6J1か5654Wは好みですがどちらが良いかは迷いますね。6K4に比べるとどちらも良さがあると思います。
上記の6J1は公式推奨の球です。5654Wは人気のある球ですね。
『Mr.DT990PRO』まだまだ続くでよ。 伝説のヘッドホンらしいです。方向性を間違えた伝説のロックバンドをイメージしてみました。
FX-AUDIO TUBE-02Jのお楽しみの続きでオペアンプの交換にチャレンジしたいと思います!TUBE-02Jですがオペアンプの交換ができる仕様になっていてオペアンプの違いによる音の違いを楽しむことが出来ます。オペアンプの交換はKOAG HA-Sの時にMUSE01に変更したりしています。MUSEの時は音場が広がって残響音も良く聴き取れるように変化しました。今回はどうなんでしょう。これは楽しみ!
オペアンプの役割は信号を十分に増幅することなんですが各メーカーによって音の違いが出るのは何ででしょうね。
上の写真の箇所にオペアンプと2か所書いてあるのがそれです。オペアンプはラジオペンチなどで挟んで抜き差ししてもできるのですがIC交換用の専用工具があるのでそれを買って交換した方が無難です。
公式によるとBurr-Brown社製 OPA627AUのオペアンプが紹介されていますが@2,980と結構お値段が張る(×2set必要)ので共立プロダクツから出ているMUSE8920Dを購入して見ることにしました。こちらは新日本無線製でオーディオ用に開発されたオペアンプのようです。
■お楽しみ!オペアンプを交換してみる
MUSE8920Dのスペックを見てみます。仕様で気になるのは入力の回路がFETになっていることです。普通、バイポーラトランジスタが使われています。FETはトランジスタでも真空管のように入力電流が殆ど流れないタイプです。真空管の出力にバッファーとして入っている回路構成のようですが入力電流がほとんどいらないので真空管にとってはドライブしやすいのではないかと思います。一般的なバイポーラトランジスタと違った音になると思います。
■主な仕様
・入力構造:FET
・特長:オーディオ用
・回路数:2回路
・電源:両電源
・動作電圧:±3.5~±16V
・出力方式:プッシュプル
・出力電流:100mA
・電圧利得:135.5dB
・スルーレート:25V/us
・利得帯域幅積(GB積):11MHz
・歪率(dB):-108dB
・歪率(%):0.0004%
・実装タイプ:スルーホール
・ピン数:8
・パッケージ:DIP8
写真のオペアンプと引き抜き工具を使用しました。MUSE8920Dは何とe-イヤホンさんの販売です。
星街すいせいさんのstellar stellarを聴いて見ます。組み合わせるヘッドホンはbeyerdynamic DT990PROです。そして球は6J1に換装しました。
音の方ですが、元々初期設定で付いているNE5532P Texas Instrumentsに比べて奇麗な音だなぁというのがファーストインプレッションです。音場は左右に広がる感じですが奥行きは浅くなった感じがしました。そしてあまり欠点の見当たらない音色です。優秀な感じですね。それから音離れが良いと言っていたところに関しては後退した感じで全体的にバランス良くまとまっている感じです。TUBE-02Jの最初に聴いたようなドライブ力のある感じやバンバン出る音離れの良さが魅力だと思いましたので今回は私としては最初からついているNE5532Pと6J1の組み合わせの方を推したいと思います。NE5532Pは100円程度のICのようですがこれは好みや相性といった所もあるので必ずしも値段が高いから全部いいと言えない所がオーディオの面白い所だと思います。
TUBE-02Jは真空管+オペアンプ+FETバッファーという構成のアンプのようですがオペアンプの性格は結構色濃く音の出方に効いてくるようです。オペアンプの影響は真空管より大きいかもしれません。これは勉強になりました。
公式の推奨する交換用のオペアンプはBurr-Brown社製 OPA627ですが何でも内部配線が太いようで音も太いとか。これはあり得ますね。聴いて見たいなぁ。配線が太いと音も太くなるのは経験則ですがある程度そういう傾向があります。音が太いというのは力強くて堂々としているとか、音が前に出てきてリアルなイメージです。音が太いのは回路的にもパターン的にも良い設計で大体は良い傾向だと考えています。こちらのオペアンプ交換は今後の楽しみに取っておきましょう。後、オペアンプの場合は互換性があるものを使用するようにしてください。ネットを見ると情報が出てくるので参考にするとよいと思います。
■ん?音がおかしくなった!
ここまで特に問題なく動作していたTUBE-02Jですが、ボリュームを絞っていても右からだけ音が出ることに気が付きました。そしてボリュームをマックスにすると左右から音が出るようになります。それから音量が全体的に小さくなりました。これはおかしいですね。どういう問題か見当がつきません。そこでFX-AUDIOさんに問い合わせたところ、良品と交換してもらえることになりました。初期不具合のようです。製品もすぐに発送して頂きました。対応が早くて好印象です。
不具合の合った製品は返品することにしました。しかし、不具合は気になりますね。
そして発送されてきた製品を聴いて見ると音は直りました。良かった良かった。改めて聴いて見ると最初に聴いた音離れの良さはTUBE-02Jの良さに思います。
DT990PROは250Ωとハイインピーダンスのヘッドホンですが良く鳴りますね。ボリュームを上げても余裕がある感じです。DT990PROの独特な迫力もいい感じに表現していると思います。
■イヤホンと組み合わせて聴いて見る
星街すいせいさんのstellar stellarの曲をイヤホンだとどんな音になるか聴いて見ることにします。最初に聴いて見たのはASHIDAVOX EA-HF1です。このイヤホンは低音出ますが圧というか独特の音圧を感じます。以前聴いた感じではドライブ力が高いヘッドホンアンプだと更に低音が出るという感じでした。
stellar stellarは音場に立体感があってきらきらのシンセがシャワーのように流れる曲なんですが。はたして冒頭から重低音が沈み込む感じで押してきますね。思った通り、いいですねー。
バックグランドには厚みのあるシンセが鳴るのですが嫌味が無くて聴き疲れしない感じです。続けて『自分勝手DAZILLING』も聴いて見ます。ムフフ、低音が凄い。これは聴いてほしいですね。TUBE-02Jの音離れが良いのと星街すいせいさんの曲はこのASHIDAVOX EA-HF1と合うと思います。2曲続けて聴くと曲の熱気があるのでテンション上がりますね。
この組み合わせはアニソン、特にノリのいいポップス好きには相当お勧めできると思いました。
次にsennheiser ie300に交換して聴いて見ます。sennheiserスキーなのでie300は良く聞くイヤホンですが最初に聴いた星街すいせいさんのstellar stellarはどう音が変わるかですがie300はまず遮音性が高いので聴いていると没入感がありますね。静けさがあるので一つづつの音が良く聴こえます。ie300はボーカルが艶やかなので星街すいせいさんの声質の良さが引き立つ感じです。シンセはきれいに鳴りますね。聴いていて気持ちいいです。低音は出るモデルですがASHIDAVOXのような音圧という感じではさすがに負けているかんじです。ただ、トータルバランスや遮音性が高いことによる臨場感、没入感など魅力あるモデルだと思います。
こちらだとクラッシックなど合いそうに思います。『リアデイル』夢見クジラさんの曲を聴いて見ます。オーケストラですが重厚な感じの中にフルートやトライアングルなどの楽器がふわっと広がって聞こえます。音場も広々していて余韻もある感じです。ただ、オペアンプを差し替えて聴いた感じではオーケストラなどはオペアンプはMUSE8920Dの方が合うと思いました。こちらのオペアンプは音がきれいな感じなのでオーケストラなど一つ一つの音をきれいに聴かせる曲には良さそうです。
■総括
FX-AUDIO TUBE-02Jですが値段も手ごろですし真空管ヘッドホンアンプの入門機としてお勧めできると思いました。何だろう、この音離れの良さ。低音がパーンと前に出る感じ。聴いていて楽しかったです。
そして、球転がし、オペアンプの換装などで音の変化も楽しめますね。ある程度球が揃ってきたら他の真空管ヘッドホンアンプでも互換性があれば差し替えられるので無駄にはならないと思います。TUBE-02Jはユーザーの要望を聴いて改良をしているようで良い方向に出ていると思いました。今回は特に改造しなくてもいいと思いました。買って良かったと思います。最後までお読みいただきありがとうございました!
【後日談】今現在ではTUBE-02Jの方から後継機のTUBE-07Jがリリースされているようです。
真空管に12AU7を使用しリモコン付きの真空管ヘッドホンアンプTUBE-05Jもリリースされています。
こちらはデモ機を借用出来ましたのでレビューしています。
私を鳴らすとはやるじゃないか。
Beyerdynamic MR.DT990PROのAIイラストによる擬人化です。レジェンドヘッドホンと自分で言っています。
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