リニア電源 TOP WING DC POWER 12Vの外観写真リニア電源 TOP WING DC POWER 12Vの外観写真

こんにちは、manotchです。

オーディオ環境の「上流」を支える電源。納得のいくリニア電源を一台使ってみたい。と考えている方も多いでしょう。今回、ネットワークオーディオ用のルーター、スイッチ、WiFiといった「上流電源用」としてTOP WING「DC POWER BOX 12V」をお迎えしましたので、内部分解写真や考察を踏まえて徹底レビューしたいと思います。

それでは早速開梱。実際に手に取ってみると、ずっしりとした重量感としっかりとした作りに驚かされます。

梱包の様子です。重量級のオーディオと同じようなクッションです。
梱包の様子です。重量級のオーディオと同じようなクッションです。

購入に至った経緯

過去のオーディオの電源強化に取り組んでいた経緯は以下の通りですが、分かってきたのは電源の重要性。特にローノイズであることでした。音が澄んで静寂感が出てくるんですよね。その時の記事はいくつか纏めていますので興味がある方はご覧くださいね。

ローノイズ電源については、菊水などのリニア電源や超ローノイズ電源IC(LT3045)、はたまたバッテリー駆動など色々試してみたのですが、リニア電源に付いてはDIYではなく1台いいのを持っておきたいと考えていました。

そんなところに昨年登場したのがTOP WINGさんのリニア電源でした。オーディオ機器にとって、電源は「食事」と同じ。上流に良質なリニア電源を置くことは、システム全体の健康(音質)を底上げすることに繋がると思います。

【注釈】リニア電源 vs スイッチング電源

比較項目リニア電源(本機)スイッチング電源(一般的)
制御のイメージ水門で水量を滑らかに調節蛇口を猛烈な速さで開閉して調節
電気の質(ノイズ)極めてクリーン(低ノイズ)高周波ノイズが混じりやすい
音質への影響静寂感が増し、音が澄むノイズで音が濁ったり刺さったりする
サイズ・重量大きく、重い(トランスの塊)小さくて軽い
変換効率・熱効率は低く、熱が出やすい効率が良く、熱が出にくい

リニア電源に5万円以上出すのは勇気がいりましたが、結論から言えば、ネットワークオーディオの『静寂感』を買う投資として買って良かったと思います。

その時はうーん、ちょっと高いかな。どうしようか・・・と思いましたが、中身の写真がちらっと記事に写っていたんですよね。それを見て、んっ?見た感じ、使っているパーツの定数が好みかも!と思ったのがきっかけです。余り欲張っていないんですよね。

購入したTOP WING DC POWER12Vの蓋を開けて撮影した写真です
購入したTOP WING DC POWER12Vの蓋を開けて撮影した写真です。電源周りの電解コンデンサなどが見えます

以前、小出力のパワーアンプを設計した時があったのですが、大体同じようなイメージだった記憶があります。余り欲張って部品を追加していくと複雑になって音の感じも全域で均一になりにくかったです。つまり何だか難しくなる。(苦笑)

この時は、あっさりしたシンプルな定数とパーツ選定にしました。そうすると、自然な感じになりました。で、TOPWINGさんの文言を見ると、コンデンサの音にキャラクターが出るので部品は最低限にしてあっさり風味にしました・・・というような事が書いてあったので、考えてることが同じ。いいんじゃないかなーという事でポチった訳です。要するに考え方が好みだったんです!後で中身についても考察していきたいと思います。

DC POWER BOX シリーズ 仕様比較表

今回選択したのはネットワークオーディオの上流電源用という事で、YAMAHAルーター、YAMAHAスイッチ、ELECOM WiFiルーターの電源に合わせた12V仕様になります。WiiM Proなどのストリーマーやスイッチでは5V仕様のタイプがありますので手持ちの機器によって使い分けする必要がありそうです。

全モデル共通仕様

項目内容
定格入力電圧AC 100V 50/60Hz
DC出力コネクタ外径 5.5mm / 内径 2.1mm(センタープラス)
外形寸法210.4 x 248 x 70.2mm(幅 × 奥行 × 高さ、突起物等含む)
標準小売価格55,000円(税込)
保証期間12ヶ月

1. 外観と運用:熱を感じさせない大型ヒートシンク

届いた箱を開けてまず驚いたのは、その大きさです。リニア電源としてもかなり大柄ですが、外装には大型のヒートシンクが鎮座しており、放熱に対する本気度が伺えます。

手前の黒いヒートシンクは定電圧ICのものです。右のシルバーのヒートシンクは2次側の整流用ダイオード用ですね
手前の黒いヒートシンクは定電圧ICのものです。右のシルバーのヒートシンクは2次側の整流用ダイオード用ですね。大型で触ると冷っとします。

発熱の少なさ

手始めにYAMAHAのルーターに使用してみましたが、0.3〜0.4A程度の消費電力では天板の発熱はほぼゼロでした。なので、5Aというのは連続動作を想定していると思いました。PSE(電気用品安全法)を取得している製品ですが、PSEを通すには箱を被せて通常動作で温度が決められた値以下である必要があります。5Aといっても一時的な最大電流しか流せない、なんちゃって5Aという製品もあるかもしれませんが、ガチで5A取れる設計に見えます。大型ヒートシンクの効果でしょうね。ファンを付けると一気に温度が下がって設計も楽ですが、モーターから出るノイズで音に影響が出るので必然的に空冷を選択したんでしょうね。PSE取得製品という事で、品質面についてはまず安心と言えるでしょう。

設置の注意点

取説に縦置きNGの記載はありませんが、PSE(電気用品安全法)の基準やヒートシンクから上部への開口の放熱効率を考えると、横置きがベストでしょう。PSEは基本的に想定した置き方(この場合横置き)で試験を行います。

運用方法

電源スイッチがリアパネルにあることから、基本的には「常時通電」を想定した設計のようです。ネットワークオーディオのルーター、スイッチなどの常用を考慮した設計がうかがえます。


2. 内部レビュー:設計者の思想が見える回路構成

好奇心に抗えず、蓋を開けて内部を確認してみました。(※分解は自己責任ですよ)

内部を見たところ、電源トランス⇒ブリッジ整流⇒三端子レギュレーター⇒平滑回路といった非常にオーソドックスな回路構成のようです。

下の方に見えるリング状の大型部品がRコアトランスです。一番お金がかかっていそうですね。
下の方に見えるリング状の大型部品がRコアトランスです。一番お金がかかっていそうですね。
  • 大型のRコアトランス:
    一番目を引いたのがRコアトランス。このタイプのトランスが乗っている製品は初めて見ました。リニア電源は何台か所有していますが、みな一般的なEIトランスが乗っていました。静かな時に耳を近づけると低い「ウーーン」という、うなり音が聴こえてきます。このRコアトランスは「うなり音」が聞こえません。以前、部品に振動を与えると音のキャラクターが出るという実験の記事を書いた事がありますが、この「うなり音がしない=振動しない」という静粛性が音のS/N感に大きく寄与しているのではないかと思いました。

3種類のトランス 比較表

参考までにオーディオで使用される代表的なトランスの方式について表にしてみました。こうして比較してみると、うなりや振動が少ないのは形状や構造からくるRトランスの特長のようです。

比較項目EIトランストロイダルトランスRトランス
コア構造鋼板の積み重ね(EとIの組み合わせ)ドーナツ型の巻鉄芯(継ぎ目なし)円形断面の巻鉄芯(継ぎ目なし)
磁路の継ぎ目あり(磁気抵抗が大きい)なしなし
漏れ磁束多い(ノイズ源になりやすい)非常に少ない極めて少ない
変換効率普通(80〜90%程度)高い(90〜95%程度)高い(90〜95%程度)
突入電流小さい非常に大きい比較的抑えられている
サイズ・重量重くて大きい最も小型・軽量小型・軽量(特に薄型)
うなり・振動発生しやすい(鋼板が振動する)少ない極めて少ない
コスト非常に安い高め高め(特殊構造のため)

EIトランスとの載せ替え試聴はやった事がないのですが、うなりがない静粛な所は良いですね。後、並行する二つの巻き線同士をボビンに巻いて漏洩磁束をキャンセルし、低ノイズ化する工夫をしているせいか、製造が難しくコストが高くなるようです。(それでちょっと高いのかも)

  • 三端子レギュレーター方式: 定格5AのIC(印字はLM338T)で実績のある回路構成です。ディスクリート構成だと設計者の音作りが反映しやすいメリットがありますが、三端子レギュレーター方式はディスクリートに比べ、動作の安定性に優れています。個性を出すよりも、電源としての基礎体力を重視した設計と言えますね。
LM338Tという印字が見えます。定格5Aのリニア電源用IC(三端子レギュレーター)のようです
LM338Tという印字が見えます。定格5Aのリニア電源用IC(三端子レギュレーター)のようです
  • コンデンサのパラ使い: 出力部には中容量の電解コンデンサを並列(3パラ)で使用。大容量ではなくパラにすることで、電流供給能力を上げて中高域のレスポンスの良さを狙っているようです。個人的には好感の持てる定数選定です。
ブリッジ整流後は3000uF程度、レギュレーターIC後は2000~3000uFを3パラの電解コンデンサを使用しているように見えます。国内メーカーのルビコン製105℃品のようです
レギュレーターIC後は2000~3000uFを3パラの電解コンデンサを使用しているように見えます。国内メーカーのルビコン製105℃品のようです

3. 試聴レビュー:音に「奥行き」と「力強さ」が宿る

ルーターとスイッチの電源を純正から本機に変えて聴いたインプレッションです。

YAMAHAルーター純正ACアダプターです。
YAMAHAルーター純正ACアダプターです。比較の時はスイッチの方も純正ACアダプターに戻してしています。
  • 空間表現: 奥行きが出るなぁと思いました。前と後ろの距離感が出て立体感に繋がるようです。サウンドステージがヘッドホンより左右に自然に広がって定位する感じです。どの辺の対策が効いているんでしょうね。これは良いと思いました。
  • エネルギー感: 中高域からの音の出方に、手持ちのリニア電源やバッテリー電源とも違う、「エネルギー感」があると思いました。手持ちのリニア電源は割とゆったりとしていて中高音も差しさわりの無いおとなしい音なんですが、DC POWER12Vは同じリニアでも中高域からエネルギー感があるんですよね。Rコアトランスの物量効果なんでしょうか。中高音が出ている相対的な傾向か、電源のコンデンサ容量を欲張っていないせいかは分かりませんが、低域の下は出ない印象です。しいて言うとこの辺が物足りないと思いました。

    ちなみに手持ちのバッテリー電源は、低域がしっかり出てピラミッド型のどっしりとした感じです。その分、高域は出ないです。バッテリー電源もコンデンサバンクを付けるとこの辺のコントロールが出来るのですが、最近は音のキャラクターになるイメージがあるので、何も付加しないで聴くことが多いです。それでもかなりいい音だと思います。ただ、バッテリーは充電が面倒なんですよね。それで、良いリニア電源が欲しいという訳です。
  • 静寂の質: 物理的な振動(うなり)がないことが、音に静寂を与えている印象です。

試しに純正のACアダプターに戻して聴いて見ると、ボーカルが引っかかったような、ざらっとした感じが出てきます。ACアダプターの接続を増やすとだんだん音が悪化するように思いました。音の広がりもマスクされたようになってバックグランドの音が聞き取りにくく平板になってきます。オーディオ用スイッチング方式の電源も設計したことがありますが、音の出方は勢いがあっていいところもあるんですが、ノイズ対策が必要で一般的には良い結果が出やすいリニア電源の方がお勧めしやすいと思います。


4. メリット・デメリットのまとめ

検討中の方のために、具体的に整理しました。

項目メリット(良い点)デメリット(気になる点)
音質奥行きが出て、中高域にエネルギー感がある。低域の低い方の出方が物足りない。
動作Rトランス採用で極めて静か。発熱も僅か。サイズが大きく、置き場所の検討が必要。※水平置き推奨
設計5Aの大容量。シンプルでオーソドックス。常時電源ON用途に向いているスイッチが背面設計のため、頻繁なON/OFFには不向き。
拡張性将来的な端子増設を予感させる筐体設計。現状はDC出力が1系統のみ。

言い忘れていましたが、基板を見るとDC出力端子の増設用と思われる拡張スペースがあるようでした。

J2~J4といった拡張用のDC出力端子が入る設計になっているようです
J2~J4といった拡張用のDC出力端子が入る設計になっているようです

そのためパターンとしてはベストと言えない引き回しかもしれませんが、量産性や将来の拡張も考えての事だろうなぁと思いました。12Vの並列出力とか少し設計変更が要りそうですが、今後の開発に期待したいですね。


5. 【応用編】5Aの余裕を活かした「3分岐電源」の提案

本機の最大出力は5A。一台のルーターだけで占有するには、あまりにももったいないスペックです。そこで現在、増殖しすぎたリニア電源(ルーター、スイッチ、WiFiなど)を整理すべく「3電源の一本化」を検討してみたいと思います。うまくいけば3台分のリニア電源が賄えるようになるのでコスパは良くなりますね。

付属品としてDCケーブルが1本ついていますが、単一接続しか出来ないので写真のような3本分岐のDCケーブルを試してみます。
付属品としてDCケーブルが1本ついていますが、単一接続しか出来ないので写真のような3本分岐のDCケーブルを試してみます。

⚠️ 注意:ここからは完全自己責任の領域です!

ルーター、WiFiアクセスポイント、ネットワークスイッチの3台を、3分岐DCケーブルで繋ぐ計画ですが、実現にはいくつかのハードルがあります。

検討すべき3つのリスクと対策

  1. ノイズの相互干渉(回り込み): 3台のデジタル機器が電源の分岐点で繋がるため、お互いのノイズが干渉するリスクがあります。各ラインへのフィルター挿入やコンデンサバンクの追加など、「共通電源でありながら分離されている」状態をどのように作るかが検討課題になります。ただし、オーディオアンプなどはLch、Rchといった内部で電源が2分岐していますので一般的にやっている方法とも言えます。共通インピーダンスが発生するため、必ずしもベストと言えない結線方法かもしれませんが、リニア電源がこの1台で済むし、シンプルなのでデメリットを上回る可能性もあるでしょう。
  2. 電圧降下: 3台分の電流が流れるため、分岐ケーブルの品質(太さ)が音質や動作に直結します。配線材の選定が必要になるかもしれません。
  3. 故障時の対応: 5Aというパワーは、実験中にショートなどのトラブルが発生したときに問題になるかもしれません。レギュレーターICのデータシートを見ると、熱過負荷保護、過電流時に安全領域まで電流制限する機能などがあるようですが過信は禁物でしょう。

まとめ:様々なオーディオ機器に接続して「1ランク上の音質を目指せる」一台

TOP WING DC POWER BOX 12Vは、5Aという電流供給能力があるため「ベース(土台)」となるクリーン電源として様々な手持ちのオーディオ機器に接続して1ランク上の音質を目指せる1台だと思います。ルーターだけではなく、上流電源として、その他手持ちのヘッドホンアンプなどに組み合わせるなどして聴いて見たいと思います。3本分岐の検討も引き続き行っていきますのでお楽しみに!

今日はここまでにします。最後までお読みいただきありがとうございました。

12V売り切れの場合は、Amazon別経由か楽天などで購入できる場合もありますので探してみましょう。

DC12Vを3分岐にするケーブルです。

DCケーブルを接続するときにオスメスが合わないので、こういったジョイントするコネクタが必要になります。

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By manotch

■自己紹介 manotch まのっち ■職業 以前、オーディオメーカーで回路設計と音質チューニングにたずさわってきました。専門はオーディオ用パワーアンプ、AVアンプ、デジタルアンプ、スイッチング電源など。現在もエンジニアとして仕事をしています。 開発経験DC~110GHz。