なぜオーディオケーブルに音のキャラクターがあるのか?なぜオーディオケーブルに音のキャラクターがあるのか?

こんにちは、manotchです。

「オーディオのケーブルを替えたら、音が変わった」 オーディオファンならずとも、こんな話を聞いたことはないでしょうか。「高音がクリアになった」「低音が引き締まった」といった感想は、しばしば「音のキャラクターが変わった」と表現されます。

しかし、多くの人は「気のせいでは?」と懐疑的です。 もし、この「キャラクター」の違いを、主観的な感想ではなく、客観的なデータとして「可視化」できたら、どうでしょう?

今回は、ケーブルが持つ「周波数-時間軸特性=Waterfall特性」に着目し、なぜオーディオケーブルに音のキャラクターがあるのか?の謎に迫りたいと思います。

オーディオケーブルの写真。
メジャーなカナレ、ベルデンのケーブル
オーディオケーブルの写真

■Waterfall特性とは?:音の「余韻と引き際」を見る地図

オーディオの世界でよく見るグラフに「周波数特性(f特)」がありますが、これはある一瞬の「音の大きさ」を切り取った「静止画」と言えます。これは音の傾向を知るための手段として広く用いられいる基本的かつ重要な測定です。しかし、得られる情報は音の手掛かりにはなるものの「100Hzの音の大きさ0.5dB」「1KHzの音の大きさ0dB」というような音の形状を平均化し、単純化したポイントデータの集まりです。

それに対してWaterfall(ウォーターフォール)特性は、そこに「時間」の軸を加えた「動画」のような3D表示のグラフであると言えます。周波数特性に比べ、時間軸に対するデータがリアルタイムで変化することで膨大な情報量があると言えます。例えば、音がどのように立ち上がり、どのように減衰するかという『変化の加速度』のような情報も可視化されていると考えられます。

ビニルチューブ銅並行単線のマイクロフォニック音のWATERFALL特性
周波数特性と時間軸特性が組み合わさっている
ビニルチューブ銅並行単線のマイクロフォニック音のWATERFALL 周波数-時間軸特性

グラフの見方

添付したのはビニルチューブ銅並行単線を100Hz矩形波で振動させたときに発生するマイクロフォニック音のWaterfall特性を実測し、3Dグラフで表示したものです。横軸Xは周波数、縦軸Yは音の大きさ、奥行きZは時間軸になります。複雑な特性となっていて非常に興味深い現象であることが分かります。

図中100Hzのピーク(25dB at 0ms)は矩形波の基音、300Hz(33dB at 0ms)と500Hz(30dB at 0ms)・・・以降はその高調波が出ていると推測します。また、60Hzには電源由来のハムが混入しています。ここはハムを拾わないようにして、今後測定精度を高めていきたいところですね。

それから20~30Hzの低い低周波は入れていないので本来現れるはずのない音なのですがケーブルが基音の振動でゆすられた結果、ゆっくりと振動する事で発生する暗騒音のような現象ではないかと推測しています。バックグランドのSNを悪化させ音を濁らせる可能性があると考えています。

分かりやすい例え: 「お寺の鐘」と「シンバル」

想像してみてください。あなたは今、二つの音の響きをグラフにしようとしています。

  1. お寺の鐘: 「ゴーン……」と低く、長く尾を引きます。
  2. シンバル: 「シャーン!」と高く、激しく散ります。

もし、普通のグラフ(2D 周波数特性)でこれを見ると、「低い音が大きい」「高い音が大きい」ということしか分かりません。しかし、Waterfall特性(3D)で見ると、以下のような「広がる地図=音のキャラクター」がもう少しはっきり見えてきます。

  • 横軸(周波数): 音の高さ(ドレミや、低音・高音)
  • 奥行き(時間): 音が消えていくまでの時間
  • 高さ(音量): 音の大きさ

グラフの見た目が「滝(Waterfall)」のように上から下へ、あるいは奥から手前へと流れるように見えるため、こう呼ばれています。

「Waterfall特性で見るべきは、山の高さではなく『裾野の広がり』です。これは車のサスペンションやブレーキと同じで、余計な揺れをいかに早く収束させるかという『制動能力』を可視化しています。この収束が遅い帯域こそが、そのケーブル固有の『音癖(キャラクター)』として耳に届く正体の可能性があると思います。」

補足:Waterfall特性 技術深掘り:CSDとQ値

1. 「時間軸」という第3の次元:累積スペクトル減衰(CSD)

Waterfall特性は、専門的には累積スペクトル減衰(CSD: Cumulative Spectral Decay)と呼ばれます。 通常の周波数特性(FFT)が「どの高さの音が、どれだけ出ているか」という静的な断面図であるのに対し、Waterfallはそこに「時間」の軸を加えた3次元のより動的な情報が加わった立体図です。より音のキャラクターをもう少し深い次元で解析する事が出来る可能性があると言えるでしょう。

2. ケーブルの固有振動モードと「Q値(共振の鋭さ)」

ケーブルに物理的衝撃を与えた際のマイクロフォニック音をこの手法で解析すると、単なるノイズ量だけでなく、そのケーブルの固有振動モードが可視化されます。

  • エネルギーの蓄積と放出: 特定の周波数でWaterfallの山が「尾」を引いている場合、それはその帯域でエネルギーが蓄積され、時間の経過とともにゆっくりと放出されている(=共振している)ことを示します。音の色付けやエネルギー感といったものに影響すると考えています。
  • 過渡応答(トランジェント): 山が鋭く、素早く減衰するほど過渡応答に優れ、入力信号に対して「忠実で色付けの少ないケーブル」と定義できます。

■FFT解析でケーブルAとBのキャラクターを可視化

さて、以前の測定でケーブルA,Bの音のキャラクターをFFT解析で2Dグラフで可視化したものが下記になります。

銅単線と錫メッキ撚線のマイクロフォニック音周波数特性比較
※グラフの見方
「(振動あり…赤色の線 / 振動なし…黒色の線)」になります。赤色の線から黒色の線を差し引くと振動のみの信号レベル差になります。要するに、赤と黒の差が大きいほど、そのケーブルは振動を音に変えてしまいやすい(ノイズに弱い)ということです。グラフを見ると黒色の線は赤色に対して1/10以下程度となりほぼ振動ありの信号が見えています。横軸は周波数レンジ10~5,000Hz、縦軸は信号電圧レンジ1uV~10V、1目盛り10倍(20dB)です。

その時の測定系は下記になります。(今回のWaterfall特性も同じ測定系です)

ケーブルから発生するマイクロフォニック音の周波数特性を測定するための接続図
ケーブルから発生するマイクロフォニック音の周波数特性を測定するための接続図

実験から分かった事

  • 振動が強いほど、マイクロフォニック音ノイズは大きくなる。⇒振動が主原因と分かる。
  • 発生するマイクロフォニック音ノイズは、元の振動とは異なる「歪んだ」波形をしている。
  • そして何より、ケーブルAとBでは、ノイズの周波数特性(グラフの山の形)が全く違う!

グラフは、ケーブルA(銅並行単線)が特定の周波数で鋭く反応し、ケーブルB(銅撚線うみへび)が比較的おとなしい特性を持つことを「可視化」してくれました。そして、低域とか中高域とかどの周波数帯でもっとも反応が高いかも分かるようになったのです。グラフの縦軸は黒線の間隔で電圧比10倍(20デシベル)です。

■なぜ?オーディオケーブルに音のキャラクターがあるのか

いよいよ、Waterfall特性を測定したいと思います。ソフトウエアはREWを使用しました。銅並行単線と銅撚線(BELDEN・通称うみへび)を動画で比較してみましょう。振動をON/OFFさせて減衰によるマイクロフォニック音のノイズ特性を収録してみました。ケーブルAとケーブルBの特性差が分かりやすいように時々ケーブルAとケーブルBの特性をパッパッと切り替えています。何か良く分からないけど形が違って見えませんか?

しかし、実験のやり方が適切かどうか?とかこの辺のグラフの見方やソフトの使い方は最近始めたばかりなのでまだ良く分かっていません。今後はもう少し測定精度を上げる工夫をしていきたいと思います。

しかし、明らかに2つのケーブルの特徴が違っている様子が見えます。どのような特性(傾向)がどのような音に結びつくのかわかってくると面白そうです。

例えば、銅並行単線は300Hzのピークが鋭くて高く、その後の音の減衰は周期的に波打っているのが分かります。それに対しベルデンのうみへびは比較的振動の減衰がなめらかであまり振動していません。振動の大きさが変化する過程で、ケーブルも一種の複雑な共振現象が起こっているようです。

例えばこの低い音域で言うとベースや男性ボーカルといった音に「艶や厚み」あるいは「濁り、付帯音」といった味付けが加わるかもしれませんね。音の認知機能の専門家ではありませんのであくまでも想像ですが・・。

■総括

オーディオケーブルが振動するわけないじゃん。ただのケーブルだし。やっぱりオカルトじゃないの?と思ったあなた。

最後に「誰でも実験出来る簡単な物理現象」をご紹介して、今回の探求の旅をいったん終わりたいと思います。

お手持ちにスピーカーがあったら音を鳴らしてください。音量を上げると箱が微妙に振動していることがありませんか?

次に振動している箱に接続されているスピーカーケーブルに触れてみて下さい。ケーブルが音楽とともに振動しているのが感じられませんか?

実はこのスピーカーが鳴るとケーブルが振動して伝わっていく現象。皆さん良くご存じの「糸電話」です。

オーディオケーブルが振動している一つの事例です。そしてケーブルは振動するとその構造や材質により固有の音(キャラクター)を音楽に重畳すると考えられるのです。非常に興味深いと思いませんか?

■参考文献・リンク

マイクロフォニック音によるノイズや物理特性をWaterfall(CSD)で解析している信頼性の高いサイトです。

Stereoophile (オーディオレビュー誌)

スピーカーやアンプの振動解析でWaterfallを使用しています。

以前投稿した記事です。興味がある方はご覧くださいね。

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By manotch

■自己紹介 manotch まのっち ■職業 以前、オーディオメーカーで回路設計と音質チューニングにたずさわってきました。専門はオーディオ用パワーアンプ、AVアンプ、デジタルアンプ、スイッチング電源など。現在もエンジニアとして仕事をしています。 開発経験DC~110GHz。