オーディオ機器を分解すると勉強になって面白いです。改造できるようになると音も色々変わるので更に面白いですね!比較的安価で楽しめる真空管ヘッドホンアンプは良いアイテムだと思いました。さあ、分解してみましょう。TUBE-02Jの魅力はどこにあるんでしょうね。

レビュー総集編纏めました。下記リンク先でまとめ読みできます。

■TUBE-02Jの分解方法は?

FX-AUDIO TUBE-02Jですが内部のオペアンプが交換できる前提の構造になっているので分解は容易になっています。フロントパネルは写真の4か所の2.5mm六角ネジを外します。

リアパネルの方は2mm六角レンチでネジを取り外します。RCAのピンジャックのネジも外します。真空管を外さないとケースが外れませんのであらかじめ抜いておきます。

【注意】分解すると故障の原因になったり感電の危険があります。くれぐれも分解するときは自己責任でお願いします。

amazonの商品説明の写真に内部の説明がありますので回路のブロック図など詳細を確認したい場合はそちらをご覧ください。ここまで詳細に説明しているメーカーさんって余り見かけないですが、こだわりを感じます。イイですね!

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現在は後継機がリリースされているようです。球は5275に変更されましたね。

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真空管12AU7を採用しリモコン付きのTUBE-05Jもリリースされています。こちらは別記事でレビューしています。興味がある方はご覧くださいね。

FX AUDIO
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中央に配置されている茶色いスリーブの部品は電源用の高耐圧電解コンデンサです。400V耐圧で日本メーカーのニチコン製です。日本製の電解コンデンサは品質的に安心感があります。TUBE-02Jもそうですが最近の真空管アンプはスイッチング電源を使用しています。スイッチング電源などは特に経時変化に強くて破損しないようなものがいいですね。

■内部部品レイアウトをNobsound NS-08Eと比較する

左がFX-AUDIO TUBE-02Jで右がNobsound NS-08Eです。

こうして比較すると両社の設計コンセプトが見えてくると思います。Nobsound社はとにかく小型コンパクトな設計をしたかったのだと推測します。横幅が特に狭くできていますね。一方、FX-AUDIO社はそこまでコンパクトな設計にこだわっていないように見えます。それでも横幅98mmなので十分コンパクトなんですが。

そのためTUBE-02Jはそこそこ空きがあるので部品を余分における余裕があります。回路構成は真空管プラスオペアンプにFETのバッファーという事ですが電源の出カップリングコンデンサも、オペアンプ周りの入出力コンデンサやオペアンプのデカップリングコンデンサも電解コンデンサがそれぞれ配置されていると推測されます。一般的なセオリーに沿った回路になっていそうです。かならずしもセオリー通りが良いという訳ではないと思いますが特性や音質的にはある程度狙って一定レベルの音質が出せるメリットがあると思います。

一方、NE-08Eは電源周りのコンデンサや入出力のコンデンサが配置されているか良く分かりませんでした。セラミックの小型チップコンデンサで代用されていると推測します。この辺は電解コンデンサだとスペースが必要なのでそうしたと思いますがオーディオ的にはどうかなぁと思います。高音が出ないのはこの辺が原因かもしれません。

『NS-08Eちゃん』えーっ、そんなぁ。manotchさんなんとかしてー。
『manotch』とは言ってもイマイチパターンが追えていないし回路図もないのでどの辺のコンデンサを変えればよいか分からないんだよなぁ。それと良いパーツを持っていれば交換するくらいは出来るかもしれないけど。

『NS-08Eちゃん』・・・恒例のNobsound社の真空管ヘッドホンアンプNS-08Eの擬人化です。中低音にパンチがあって小型コンパクトな可愛らしいアンプです。別の項で記事にしていますのでそちらも見て下さいね。

『manotch』まぁ、コンパクトで場所を取らないのは大きな売りだと思うよ。見た目もおしゃれだし。
『NS-08Eちゃん』そうですよね~。

■使用パーツを見てみる

TUBE-02Jですがパーツはちょっといいものを使用しようとする意気込みが感じられます。写真左下の青い2個の大型部品は入力のカップリングコンデンサですが、以前300Bの真空管アンプで検討した時、入力のカップリングコンデンサで音がコロコロ変わるという経験をしました。秋葉原で同じ容量でメーカーを色々変えて集めて交換した所、音が柔らかかったり、固かったりとかです。柔らかい音のコンデンサにして後々先輩に聴いてもらったら『音柔らかいねー』と褒められました。(同じこと言ってると思った)RCAケーブルから信号が入って一番最初の部品になるので後々まで音に効いてくるのでしょうね。

それにしても高耐圧のコンデンサのせいか大型部品がおごられています。真空管アンプの音に魅力があるのはこの辺にもあるかなと考えています。大型だから音がいいという訳ではありませんが部品による音の差はあるので色々試して見た結果がこの青色の大型コンデンサなんでしょう。

右下のDC12V入力のコネクタの近辺に赤色のワイヤが巻いてある部品があるのですがこれはトロイダルのコイルのようです。DC12Vからノイズが入ってもここで減衰するようになっています。ある程度ACアダプターの方からノイズが入ってもいいような配慮だと思います。Nobsoundの方はコイルが入っていないように見えます。

■秘密兵器登場

光学顕微鏡ですがスマホの画面に映せるんですよね。これは安価な割には便利。

下の写真は購入したものですがもう販売されていません。類似品が出回っていますので興味がある方はamazonさんで光学顕微鏡、スマホなどで検索すると出てきますよ。

現行品の類似品はこれでしょうね。

電源周りのICです。5430という型番のようです。

裏面の半田付けです。クリンチ(足を折り曲げる加工)はしていないようです。単純なカットです。白色のレジストがかかっているので分かりにくいですが半田付けの周りはリング状にパターンが抜いてあって浮島になっています。この部分は表層で接続されているようです。この手の部品ははんだ付け箇所を温めて交換できそうです。その為、電解コンデンサは交換できそうな感じです。

■基板裏のパターンを見てみる

基板裏のパターンも見てみることにします。配線のパターンは重要で部品を生かすも殺すもパターン次第です。ダメなパターンだと何をやっても音がダメだった記憶があります。こちらの基板は両面基板のようで、表裏にパターンがありますので回路図が無いので全容は良く分かりませんが表の部品と公式から出ているブロック図を基にすればなんとなくイメージが分かりますね。

■部品の配置が分かるようにしてみる

写真のままだともう一つよく分からないので、主要なパーツの配置だけ書きこんで見ました。はい!こちら!

部品のレイアウトはなんとなく信号の流れが読める感じで良さそうに思いますがどうなんでしょうね。ヘッドホンジャックが大きいので場所的に配置に苦労しそうですが敢えて6mmのジャックを付けたのは音質への配慮でしょうか。しっかりしたコネクタとかボリュームとか不思議と音に効くんですよね。音もしっかり出る様になった記憶があります。

よくよく見ると電源のインダクタは閉磁路タイプを使用しています。インダクタは開磁タイプもあってこちらは磁束が外部に漏れやすくてノイズが出やすいですが閉磁路タイプは磁束が外部に漏れない構造になっていてノイズが出にくいです。閉磁路タイプの方が構造が複雑で価格も高いのですが気を使っているかもしれません。電源のトロイダルコイルといいノイズ対策を考えているように思いました。ノイズの方はスペアナを使ってアンテナで拾ってみるとかすると高調波の周波数成分やノイズレベル差が分かります。スペアナは手持ちはありませんが最近は凄く安価なものが出回っているのでテストするのも面白いかもしれません。

ノイズ対策って何W出力!とは違って『売り』になりにくいのですが対策を入れている感じなので好感が持てます。聴感上のノイズが出ると興ざめになるのですがその点、FX-AUDIOのTUBE-02Jはイイですね。SN感がいいです。気になるノイズが出ていません。

■基板裏からみた部品配置も分かるようにしてみる

こうなったらということで、基板裏からも部品配置を書いて見ました。

以前オーディオテクニカさんのヘッドホンアンプを分解したときは基板裏にPGND(パワーグランド)とかシルク印刷してあったのでGNDとかどこにあるか分かりやすいですが書いていないので推定するしかありません。その点、TUBE-02はGNDとか書いているわけではありませんが電源ブロックの電解コンデンサが並んでいるのでここのマイナスがGNDと思えばいいのかなと思います。

高耐圧コンデンサですがテスターで測定した所、97Vでした。400V耐圧なのでもっと高い電圧がかかっているかもしれないとビビっていたのですが97Vだったのでちょっと安心です。(マテマテ)

あ、電圧測定は危ないです。ショートさせるとあっという間に壊れます。分解や測定はくれぐれも自己責任でお願いします。

それから最近はヘッドホンのドライブ力を確認しておくためオペアンプの電源電圧も測定することにしました。オペアンプは17.6Vですね。amazonさんの製品説明では正負電源とあったのですがどうなんでしょう。17.6Vの場合は理論上出力が17.6Vppまで出るわけですがロスもあるのでそこまで出ないと思います。ただ、これくらい出ていれば最近の他のヘッドホンアンプを測定した結果から十分そうに思います。

【後日談】後で調べたらオペアンプ部は正負電源という事で±8.8Vでした。8.8×2=17.6Vという事でつじつまはあっていますね。

今日はここまでにします。最後までお読みいただきありがとうございました!


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By manotch

■自己紹介 manotch まのっち ■職業 以前、オーディオメーカーで回路設計と音質チューニングにたずさわってきました。専門はオーディオ用パワーアンプ、AVアンプ、デジタルアンプ、スイッチング電源など。現在もエンジニアとして仕事をしています。 開発経験DC~110GHz。