ATX電源をオーディオ用の電源に使ってACアダプターの音質を超えようというテーマですが、次に何を準備したらよいのか?結線はどうしたら良いか?そして音を鳴らすまでの手順はどうするのか?を順を追って記事にしていきます。

■オーディオ機器を鳴らすまでに必要なもの

ここでは実験に何が必要かを書いていきます。

【ATX電源】

玄人志向 電源 KRPW-BKシリーズ 80PLUS Bronze 650W ATX電源です。

そうそう、オーディオ機器はATX電源が12Vメインなので12V入力のものに限られます。ATX電源は12V,-12V,5V,3.3V出力があるようですが今回は12V出力を使用します。写真のものはファンが付いていますので少し動作音が気になります。そこで、発熱を確認したうえで筐体のねじを外し蓋を開けてコネクターを外し、ファンを止めています。実験するときは自己責任でお願いします。ファンレスの電源ならいいですね。

玄人志向
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筐体のカバーを外して内部を見るとファンと回路が赤黒のケーブルに白いコネクターでつながっていますのでこれを外せばOKです。オーディオ機器を連続動作させ、温度上昇を確認します。手で触っても熱くない程度なら大丈夫だと思います。くれぐれも電源を切ってから触ってくださいね。感電するかもしれませんので。

それから別に650W必要という訳ではありません。使用するオーディオ機器に対して定格の数倍上回ればまずは使用してよいかと思います。650Wにしたのは別の理由があり、一つは今のPCの電源が650Wなので壊れた時にすぐ代用できるというものです。そしてオーディオ的の観点からだとパーツ類が大電流を流せる設計なので経験則ですが音への効果が期待できるというのもありますね。実験に使用したオーディオ機器はFiiO K7 DACと真空管ヘッドホンアンプXDUOO MT602ですが数W程度の電力なので余裕はありまくりです。

実際ちょっと聴いた感じですが面白いことにスケール感があって割と一つ一つの音が厚く良くも悪くも主張が多い音に感じます。どうしてこういう音になるんでしょう。良く分からない領域です。うーん、ちょっと荒っぽいかなぁ。長い時間聞いていると少し聴き疲れする感がありますね。

スイッチングノイズは出ていると思いますのでその辺かも。後で電源フィルターを入れて確認してみましょう。この辺はノイズの小さいリニア電源に比べるとデメリットになる可能性があります。

■ATX電源検証ボードの紹介

ATX電源の使いこなしですが外付けの検証用ボードというのがあり接続することで電源をスイッチでONOFF出来るようになります。例えば下記の写真のボードを見つけました。結構便利です。

写真ですが青色の基板には既に部品がはんだ付けされており組み立てるのはねじ止めによるアクリルパネルのみです。下記は商品説明から抜粋したものです。赤色LEDによる電源インジケーターやスライドスイッチは簡単に操作出来ます。なお、お値段のせいかビルドクオリティーは低いです。赤黒のターミナルの取り付けがばらついていました。まぁ、ケーブルを止めるには問題なかったです。

  • ATX電源から各電圧を取り出せます。ON/OFFスイッチ付きですので単体動作が可能です。アクリル保護カバー付き。
  • デジタルアンプやLEDの駆動に安価なATX電源を流用できます。
  • 入力:24ピンATXポート 出力電圧:-12V、12V、5V、3.3V
  • 各出力ポートには5Aヒューズが付いています。
  • 電源インジケータ、電源スイッチ付き
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よく似たコンセプトで下記のケーブルねじ止めタイプの電源取り出しモジュールもありました。こちらは配線をねじ止めするタイプです。どちらでもコネクターを差し込んで電源ONOFF出来るようになります。

組み立てるとこんな感じになります。最初に説明したタイプより小型になります。こちらはUSB端子から5Vを取り出せますね。こちらの方がコンパクトでカッコいいかな。機能的には同じです。しかし、この内容でこのお値段。採算取れているんでしょうか。下記は比較写真です。

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電源取り出しモジュールを使用しなくてもコネクタで取り出す方法もありますがピンとピンを接続したりする必要があります。こちらの方が配線はシンプルになりますが電源がONOFF出来ないので少し面倒です。電源本体のスイッチでONOFFはできますがLEDが点灯するわけでも無いので切り忘れますね。これは余り宜しくない。(苦笑)

写真をのせておきますので興味がある方はコネクタの仕様を調べて接続してみてください。写真の白いコネクタは購入する必要があります。ブログの趣旨としては誰でも簡単に試せるほうが良いと思いますので紹介のみにとどめておきます。

■面白そうな電源ノイズフィルター紹介

電源ノイズフィルターですがACアダプターでもATX電源でも効果があると思います。どちらもスイッチング電源なので恐らく必要かなーと思って準備しました。必ずしも期待した効果があるとは限りません。個人的な見解ですが音変アイテムだと思います。

色々付け替えて好みの音色を探ります。最近、フォロワーさんで電源フィルター基板を自前で起こしている方もいらっしゃいましたのでそういったタイプも検討しても面白いかも。この辺は試したことがない領域です。使用するコンデンサや半田でも音が変わるとか。オーディオの楽しみ方は無限にありますね。

電源の強化とノイズ対策について過去part1~part9までをまとめたものを記事にしていますので興味がある方はご覧ください。長いです。

電源のノイズフィルターで定番アクセサリーのFX-AUDIOさんのPedit Susieとtankです。簡単に付け替えが出来るので試してみるにはちょうどいいですね。まとめて過去にpart1~9の中で記事にしていますので興味がある方はご覧ください。

一方、下記はFX-AUDIOさんの電源アクセサリーに関するレビューにフォーカスした記事になります。

それから、今回は650WクラスのATX電源という事で電源フィルターもなるべく大電流を流せる定格のものを購入してみました。FX-AUDIOは5Aですがこちらは10Aクラスです。流石にコイルやパターンはごつくなっています。この差はどうでるか?楽しみですね。

■COSEL SNR-10-223T紹介

電源メーカーでメジャーなCOSEL社の直流用電源ノイズフィルターですが、これのいい所は分解しやすくケースが簡単に外れることです。そして一枚物の片面プリント基板に部品が実装されていて部品の取り換えもしやすい。これは良いですねー。しかし、アマゾンさんとかでは売っていないようです。今回、私はモノタロウから購入しました。

裏面から見るとこんな感じです。パターン幅を見ると10Aいけそうです。メンテもしやすくパターン設計も好みですね。写真のGNDのシャーシは強度が高くがっしりしています。これはお勧めできそう。DC入力専用の電源フィルターなのでAC100V系には使用できません。注意してください。回路的には同じようですが、パターン間の距離(沿面距離)が取れていません。

項番 項目 SNR-10-223
入出力形状:コネクタ
1 定格電圧(DC)〔V〕 50
2 定格電流(DC)〔A〕      ※1 10 (ピーク 20)
3 試験電圧(端子 – 取付板間) AC500V(カットオフ電流= 100mA),1 分間,常温 常湿
4 絶縁抵抗(端子 – 取付板間) DC500V 50MW min 常温 常湿
5 直流抵抗〔mW〕 20max
6 使用温度 - 40 ~+ 71C (ディレーティング特性参照)
7 使用湿度 20 ~ 95% RH (結露なし)
8 保存温・湿度 - 40 ~+ 75C,20 ~ 95% RH (結露なし)
9 振動 10 ~ 55Hz,19.6m/s2
(2G),周期 3 分 X,Y,Z 方向各 1 時間
10 衝撃 196.1m/s2
(20G) 11ms X,Y,Z 方向 各 1 回
11 安全規格 UL60950-1,C-UL(CSA60950-1),EN62368-1
12 外形寸法(突起物含まず)/ 質量 52X35X117mm(WXHXD)/ 140g max (オプション:- D,- T,- DT は外形図参照)

■TDK RSEN-2010D紹介

ティーディーケーラムダ TDKラムダ 電源ライン用EMCフィルタ RSEN-2010Dです。こちらはアマゾンでも購入出来ました。

こちらは高級感がありますね。手に持った感じ重いです。COSELの2倍くらいですね。音は良さそうな感じですがどうなんでしょう。

こちらも分解は出来ました。蓋は外せます。しかし基板タイプではなく端子に直接リードを巻き付けていました。そしてコイルやコンデンサは黒色のモールドが施されていました。これで重いのか・・。

改造はしにくい・・・というか出来なさそうです。(汗)今回使用したのは下記の製品になります。他にも定格が異なるタイプがいくつか販売されていますがこれだけどういう訳か安い!お買い得ですね。

TDKラムダ
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電気的特性 TDKカタログより抜粋

定格電流10A
定格電圧 [AC]250V
定格電圧 [DC]250V
耐電圧AC2500V, 60s [line – earth]
絶縁抵抗 (Min.)100MΩ [DC500V, 1min.]
漏洩電流 (Max.)1mA [250V, 60Hz]
直流抵抗 (Max.)40mΩ
コモンモード減衰保証量 (Min.)25dB (0.2MHz~20MHz)
ディファレンシャルモード減衰保証量 (Min.)25dB (0.2MHz~30MHz)

形状と寸法

形状 / 取付DINレール
長さ(L)52mm Nom.
幅(W)98mm Nom.
高さ(H)43.4mm Nom.
質量260g Typ.

■電源ノイズフィルターを分解して並べてみる

さて、ここで電源ノイズフィルターを並べて分解した写真をアップしておきます。

比較してみるとTDKはコイルが大きいですねー。ノイズカットの効果は高そうです。モールドでがっちり固めていますが効果はどうなんでしょうね。これは楽しみ!

『ノンマル=コモンさん』電源ノイズフィルター?私を無くすなど不可能・・・。蹴散らしてくれる!

高周波ノイズの擬人化です。完全になくすことは難しく不滅の存在です。

今日はここまでにします。最後までお読みいただきありがとうございました。

オーディオの電源を強化しようの発端。始まりの物語についてはpart1~part9のいずれかに書きましたのでそれぞれのページを参考にして見て下さい。一応下記にリンクを貼っておきますね。

ACアダプターから発生するスイッチングノイズに気が付いたことから物語がスタートします。

FiiO K7やその他、ACアダプターから発生するスイッチングノイズをオシロで見てみました。また、対策としてシンプルなノイズフィルターを作成して効果を確認しました。まさかのあの人物もヒアリングをしてくれました。

シンプルな電源に入れるノイズフィルターの定数を変更して音の変化を確認しました。また、市販の電源に入れるノイズフィルターも試しています。

市販の電源に入れるノイズフィルターの使いこなしや音のインプレッションなどを書きました。電源沼楽しー。

ノイズが小さいリニア方式のACアダプターを試して見ました。また、スイッチングノイズをAMラジオで受信して音を聴いてみる実験を行いました。(動画あり)

超ローノイズのACアダプターというiFiさんの電源を試して見ました。音のインプレッションや電源ノイズの波形観測など行っています。

電源ラインの強化という事で電源タップをオーディオグレードに変えてみました。音のインプレッションや一般的な電源タップとの比較で内部を分解して構造を比較をしてみました。

究極の低ノイズ電源といえばバッテリーですね。乾電池によるバッテリー電源の音のインプレッションやLANハブからくるスイッチング電源のノイズを取るとどうなったかなど記事にしました。

今までのオーディオの電源を強化してみようpart1~part8までの総括になります。最終回。といってもまだ一週目。また、どこかで会いましょう。

【後日談】その後、電源強化のお話再開。2週目part10~part18までになります。主にPCオーディオ電源強化編です。かなり突っ込んだ話になっていますがPCの電源強化もやりがいありますよー。

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By manotch

■自己紹介 manotch まのっち ■職業 以前、オーディオメーカーで回路設計と音質チューニングにたずさわってきました。専門はオーディオ用パワーアンプ、AVアンプ、デジタルアンプ、スイッチング電源など。現在もエンジニアとして仕事をしています。 開発経験DC~110GHz。