オーディオ用USBケーブル残留ノイズの違いオーディオ用USBケーブル残留ノイズの違い

はじめに――USBケーブルを変えると残留ノイズは変わる?

USBケーブルで音は変わるのか?

オーディオの世界では昔から議論されているテーマです。

今回はUSBケーブルの内部構造に注目し、DACのアナログ出力に現れる残留ノイズを実際に比較してみました。比較したのは一般的なUSBケーブルと、個別シールド構造を採用したオーディオ用USBケーブルです。

オーディオ用USBケーブル残留ノイズの違い
オーディオ用USBケーブル残留ノイズの違い

【検証結果】残留ノイズの差は明確にあった

同じデジタル無音を再生する条件でDACのアナログ出力を96kHzで録音し、FFT解析してみたところ、20kHz以上の特定帯域で約6~7dB、可聴帯域の12~20kHzでも最大0.88dBの残留ノイズ差が観測されました。
そして、全体的にオーディオ用USBケーブルの方が残留ノイズが小さくなる傾向でした。

では、USBケーブルの構造にはどのような違いがあり、今回の測定では何が起きていたのでしょうか?

構造の解説動画と実測グラフを使って紹介していきます。

1. USBケーブルの内部構造にはどのような違いがあるのか?

USBケーブルには、電源線と信号線の配置、シールド構造、電源供給方法などが異なるさまざまな製品があります。

そこで、代表的な構造を4タイプに分類し、内部の配線構造と設計の狙いを動画にまとめてみました。

USBケーブル構造4タイプ  一般的なUSBケーブルとオーディオ用USBケーブルでは何が違うのか解説

動画で紹介しているのは次の4タイプです。

① 一般的なUSBケーブル

電源線(VBUS・GND)と信号線(D+・D−)を同じケーブル内に収めた一般的な構造です。

一般的なUSBケーブルにもシールドはありますが、その内部構造は製品によって異なります。電源系と信号系を個別にシールドしていない構造では、両者の間で電磁的な結合(クロストーク)が発生する可能性があります。

② 内部シールド分離型USBケーブル

電源系と信号系の間の電磁的な結合を抑えることを狙い、内部に個別のシールドを設けた構造です。

電源ラインの高周波ノイズが信号ラインへ結合する経路を減らすことが期待されます。

③ 電力補強Y字型USBケーブル

2つのUSBポートなどを利用し、機器に必要な電源を補助的に供給する構造です。主な目的は電源供給能力の補強や電圧降下への対策です。

④ オーディオ用電源分離型USBケーブル

データ伝送用と電源供給用の経路を物理的に分け、外部電源からDACに電力を供給できる構造です。

PCのUSB電源由来のノイズをさらに減らすことを狙っています。②の内部シールド分離とは異なり、電源の供給元そのものを分離する方式です。両者を組み合わせることで、さらにノイズ対策を強化することも可能です。


今回の実験では、この4タイプのうち①一般型と②内部シールド分離型に相当するUSBケーブルを比較しました。

2. 今回比較した2種類のUSBケーブル

今回使用したのは、一般的なUSBケーブルと、オヤイデ電気の「d+USB class B/1.0」です。
下記は検証の為、実際に購入し途中でケーブルを切断した写真です。

一般的なUSBケーブルと、個別シールド構造を採用したオーディオ用USBケーブルの断面写真を「自腹」で撮影

一般型USBケーブル

一般的なUSB接続に使用するケーブルです。

オヤイデ d+USB class B/1.0

オーディオ用途を意識して設計されたUSBケーブルです。メーカー公式で個別シールドペアを備えた二重シールド構造が明記されています。

仕様を確認すると、次のような特徴があります。

  • 銀メッキ高純度無酸素銅導体
  • 電源線21AWG、信号線25AWG
  • 反転同心撚りのフラットケーブル構造
  • 錫メッキ線とアルミテープを使用した二重シールド構造
  • USB 2.0 Hi-Speed対応
実際にケーブルを切断して断面を比較してみると(自腹!)、一般型では4本の芯線がまとまった構造なのに対し、オヤイデはフラットな被覆内で2系統に分かれた構造であることが確認できました。メーカー仕様で説明されている個別シールド構造の特徴も、断面写真からうかがえます。

なお、2本のケーブルではシールド構造以外にも導体材質、線径、配置などが異なります。

そのため、測定結果はシールド単独の効果ではなく、ケーブル全体の構造や電気的特性の違いによる結果として評価していきます。

3. 電源系と信号系を分離するとアイパターンはどう変わるのか?

ケーブル構造の違いによって、信号線へのノイズ結合がどのように変化する可能性があるのでしょうか?

視覚的に理解するため、自作のシミュレーションソフトでアイパターンの変化を動画にしてみました。

usbケーブルの構造によるアイパターンの差

※この動画はノイズ結合の影響を概念的に示したシミュレーションであり、実際のUSBケーブルの伝送波形を測定したものではありません。

アイパターンとは、デジタル信号の波形を重ね合わせ、信号の振幅やタイミングの余裕を視覚化したものです。

個別シールドによる分離がない構造では、信号ラインにノイズが重畳し、アイパターンの開口が小さくなる様子(信号波形の品質低下)を表現しています。

アイパターンが変化しても、正常なデータ受信が維持されている限り、直ちにデジタル音声データの値が変化するわけではありません。

しかし、電源線(VBUS/GND)や信号線(D+/D−)に重畳した高周波ノイズが、DAC内部の電源回路やアナログ回路へ結合する可能性があります。

つまり、デジタルデータが正しく復元されることと、アナログ出力にノイズが現れないことは別問題です。

なお、アイパターンの変化と、これから紹介するDACのアナログ出力残留ノイズの差が直接対応することを示したものではありません。

では、実際のDACのアナログ出力を測定すると、どのような違いが現れるのでしょうか?

4. 実験環境と測定方法

図:USBケーブルの残留ノイズ比較実験の接続構成。一般型USBケーブルとオーディオ用USBケーブルのみ交換し、DACのアナログ出力をZOOM H4essentialで録音・FFT解析しました。

測定にはNICEHCKのUSBドングルDAC「NK1 MAX」を使用しました。

接続構成

PC(WaveGene) → USBケーブル → NICEHCK NK1 MAX → 3.5mmアナログケーブル → ZOOM H4essential

録音条件:ZOOM H4essential/録音入力3.5mm MIC/LINE IN
録音形式:96kHz・32bit float WAV/解析方法FFT・帯域別RMS比較
プラグインパワーおよびローカットなどのフィルター類はすべてOFFに設定

補足事項

H4essentialは本体の記録メディアに録音し、録音中はPCとUSB接続していません。PCと録音機のUSB接続によるグランドループが形成されない構成です。

なお、今回使用した一般的なUSBケーブルとオヤイデ d+USB class BはいずれもUSB Type-A to Type-B端子であり、NK1 MAXの入力はUSB Type-Cです。そのため、どちらも同じUSB-B to USB-C変換コネクタを介して同一条件で接続しています。

また、今回の測定値はDAC単体を校正測定した値ではなく、ZOOM H4essentialの録音系を含んだdBFS値での相対比較です。

5. FFT解析――20kHz以上で約6~7dBの差が!

それでは測定結果です。

一般型USBケーブルとオヤイデ d+USB class Bを使い、デジタル無音を連続再生した状態のWAVファイルをFFT解析しました。

図:デジタル無音再生時のFFTスペクトル比較(一般型 vs オヤイデ d+USB class B)

グラフを比較すると、一般型USBケーブルでは20kHz以上の特定帯域に大きなノイズ成分が観測されました。さらに周波数帯域別にノイズのRMSを計算し、両ケーブルの差を比較しました。

周波数帯域 Lchの差/Rchの差

20Hz~20kHz +0.22dB/+0.30dB
20~22.05kHz +6.79dB/+6.66dB
22.05~30kHz +2.69dB/+4.03dB
30~40kHz  +1.95dB/+2.44dB
40~46kHz  +6.83dB/+6.11dB

※数値は「一般型USBのノイズレベル-オヤイデのノイズレベル」。プラスは一般型の方がノイズが大きいことを示します。
全体的に一般型の方が残留ノイズが大きい傾向であることが分かりました。

特に注目したいのは20~22.05kHzと40~46kHzの帯域です。

一般型USBケーブルでは、オヤイデと比較して左右チャンネルともに約6~7dB大きな高周波ノイズが観測されました。

約6~7dBという差は、ノイズのRMS振幅でおよそ2倍に相当します。

デジタル無音を再生している条件で、これほどの差が現れたのは興味深い結果です。

高周波ノイズの発生源としては、DAC内部のデジタル処理や電源回路、USB接続に伴う高周波ノイズなど、複数の可能性が考えられます。

※20kHz以上のノイズの差が、そのまま人間に聴き取れる音質差を意味するわけではありません。

異なる信号条件でも、ほぼ同じノイズ差が観測された

実は今回のデジタル0連続再生とは別に、WaveGeneから2.5kHzの基準信号を再生した状態でも、同じ2種類のUSBケーブルで残留ノイズを測定しています。

その結果を比較したものが次の表です。

WaveGeneから2.5kHzの基準信号を再生した状態でも、同じ2種類のUSBケーブルで残留ノイズを測定。同様の傾向がみられました。

一般型USBの残留ノイズ増加量(オヤイデとの差)

周波数帯域 2.5kHz再生 L/R
20~22.05kHz +7.42 / +7.20dB +6.79 / +6.66dB
40~46kHz +6.28 / +5.87dB +6.83 / +6.11dB

いずれも96kHz録音による測定結果です。

2.5kHzの信号を再生した場合でも、デジタル無音を連続再生した場合でも、一般型USBケーブルの方が20~22kHzでは約7dB、40~46kHzでは約6dB大きなノイズを示しました。

つまり、今回の高周波ノイズ差は、2.5kHzという特定の音声信号を再生している場合だけに現れる現象ではありません。

異なる信号条件でも同様の傾向が観測されたことは、今回の実験結果を評価するうえで重要な点です。

ただし、両測定とも同じDACや録音機を使用しているため、測定系に共通する影響までは排除できません。また、同一条件でケーブル交換を何度も繰り返した検証とは区別する必要があります。

それでも、異なる再生条件でほぼ同じ大きさの差が現れたことは、今回のノイズ差の再現性を支持する結果と考えられます。

なお、40~46kHzは96kHz録音のナイキスト周波数に近いため、録音機の高周波特性や折り返し成分の影響も含めて評価する必要があります。

6. 可聴帯域の残留ノイズにも違いはあるのか?

では、人間の可聴帯域に相当する20Hz~20kHzではどうでしょうか?

デジタル0連続再生時の全帯域残留ノイズRMSで見ると、一般型USBの方がLchで0.22dB、Rchで0.30dB大きい結果でした。

これだけを見ると、わずかな差に思えます。

しかし、周波数帯域を細かく分割して解析すると、少し違った傾向が見えてきました。

【図:周波数帯域別の残留ノイズ差・棒グラフ】

周波数帯域 Lchの差/Rchの差 

20~80Hz +0.27dB/+0.39dB
80~200Hz +0.10dB/+0.09dB
200~500Hz 0.00dB/−0.20dB
500Hz~1kHz −0.17dB/−0.02dB
1~2kHz −0.03dB/−0.02dB
2~4kHz −0.01dB/0.00dB
4~8kHz +0.29dB/+0.34dB
8~12kHz 0.00dB/+0.03dB
12~16kHz +0.62dB/+0.80dB
16~20kHz +0.57dB/+0.88dB

※マイナスはオヤイデの方がわずかにノイズが大きいことを示します。

中低域ではほとんど差がありませんが、12kHz以上の高音域では一般型USBのノイズが大きくなる傾向が見られます。

特に16~20kHzでは、右チャンネルで最大0.88dBの差がありました。

全帯域のRMS値では0.2~0.3dB程度の差ですが、帯域別に分解することで、可聴帯域では特に12~20kHzの高域でノイズ差が大きくなっていることが分かります。

※これらは低いレベルの残留ノイズで、ZOOM H4essentialの録音系ノイズも含んでいます。そのため、この差が実際に聴き取れるかどうかは、今回の測定だけでは判断できません。

一方で、全帯域のRMSだけでは見えにくい違いが、周波数帯域を分けることによって確認できた点は興味深いと思います。

7. なぜUSBケーブルによって残留ノイズが変わるのか?

USBはデジタル伝送であるため、正常に通信できている限り、ケーブルによって音声データの数値そのものが変わることを前提にする必要はありません。

しかし、USBケーブルはデジタルデータだけでなく、電源や高周波ノイズの伝搬経路にもなります。

具体的には、次のような経路が考えられます。

  • 電源系(VBUS/GND)と信号系(D+/D−)の間の電磁的な結合
  • GNDラインやシールドを通じたPC側からの高周波ノイズの伝搬
  • ケーブル導体やコネクター部のインピーダンスの違い
  • 高周波ノイズのDAC内部電源やアナログ回路への結合

今回使用したオヤイデ d+USB class Bは、個別シールドペア、比較的太い電源導体、フラット構造などを採用しています。

こうした構造や導体配置、電源・GNDのインピーダンスなどの違いが、DACに伝わる高周波ノイズの条件に影響した可能性があります。

ただし、今回の実験ではUSB電源ラインのノイズやGND電流、シールド電流などを直接測定したわけではありません。

したがって、どの経路によって今回のノイズ差が生じたのかは、まだ特定できていません。

今回分かったのは、あくまで異なる2本のUSBケーブルを交換したとき、DACのアナログ出力に現れる残留ノイズの周波数分布が異なっていたということです。

それでも、デジタル伝送におけるケーブルの役割を、電気的なノイズの伝搬という観点から考える興味深い結果だと思います。

8. まとめ――USBケーブルの構造と残留ノイズの興味深い関係

今回は代表的なUSBケーブルの構造を4タイプに分類して動画で紹介し、そのうち「①一般型」と「②内部シールド分離型に相当するオヤイデ d+USB class B」でDACの残留ノイズを比較しました。

デジタル無音を連続再生して測定した結果、次のような違いが観測されました。

20~22kHz、40~46kHzの超音波帯域では約6~7dBの差。

20Hz~20kHzの可聴帯域全体では約0.2~0.3dBの差。

可聴帯域の高域(12~20kHz)では最大0.88dBの差。

高周波側の特定帯域では、オヤイデ d+USB class Bを使用した条件の方が、残留ノイズが特に小さい結果となりました。

そして重要なのは、2.5kHz信号を再生した別の測定でも、20~22kHzと40~46kHzの帯域でほぼ同じ差が観測されたことです。

異なる信号条件で共通した傾向が現れたことは、今回の測定結果を評価するうえで注目すべき点だと思います。

もちろん、今回の実験だけでシールド構造単独の効果を証明できたわけではありません。また、同一条件で繰り返し交換した際の再現性も、今後さらに確認する必要があります。

そして、オーディオ用USBケーブルの方が音質に優れていると証明できたわけでもありません。

しかし、USBケーブルは単なる「0と1の通り道」ではなく、PCとDACを結ぶ電源や高周波ノイズの伝搬経路にもなり得ます。

同じデジタル無音を再生する条件でも、USBケーブルの違いによってDACのアナログ出力残留ノイズに差が現れる場合がある。

今回の実験は、オーディオにおけるUSBケーブルの役割を、デジタルデータの正確さだけでなく、電気的なノイズの側面からも考える興味深い結果となりました。

今回使用したオヤイデ d+USB class Bは、導体やシールドなどの構造に工夫が見られるケーブルです。今回の測定でも高周波ノイズが小さい結果が得られたので、ノイズ対策を重視する方には検討する価値のあるUSBケーブルだと思います。

今回の断面撮影のために1本切断しました。結局、測定用と合わせて自腹で2本買っちゃったよ! ライトグリーンも良いですが、オーディオ機器にマッチした黒モデルとかも欲しいですね。

オヤイデ d+USB Class AとClass Bは何が違う?

今回使用したClass Bには、上級モデルの「Class A rev.2」もあります。メーカー公式仕様から主な違いを比較してみました。

Class B、上級モデルの「Class A rev.2」、更に上のClass Sもあるそうです

主な違いは、導体材質とケーブル外装、コネクターの構造です。シールド構造と導体径は同等の仕様となっています。内部構造や測定結果がどのように違うのか、こちらも興味深いところですね。

あ、黒モデルだ……。

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参考資料

今日はここまでにします。
最後までお読みいただきありがとうございました。

2026.11.3 筆者note記事より転載

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By manotch

■自己紹介 manotch まのっち ■職業 以前、オーディオメーカーで回路設計と音質チューニングにたずさわってきました。専門はオーディオ用パワーアンプ、AVアンプ、デジタルアンプ、スイッチング電源など。現在もエンジニアとして仕事をしています。 開発経験DC~110GHz。